日本で民主化と同胞のサポート
香港国安法施行後、香港現地よりも海外のほうが香港民主化についてできることが多いと実感したローレンスは、20年11月、留学先の日本に戻る。現在、東京の難関国立大の研究室に研究者として勤務している。だが香港という土地、香港人というアイデンティティに強いこだわりがあるため、日本への移民や帰化の手続きを直ちに申請はしないが、当面は安全が確保された日本を拠点にして香港の民主化を促す活動に注力するという。
ローレンスは教育者として海外で、香港現地で失われつつある歴史と文化を守り、継承する先駆者になろうとしている。日本と香港の関わりは深いのに同胞を利害関係無くまとめる団体がひとつも存在しないことに気付き、21年2月9日付で「日本香港人協会」を仲間らと立ち上げた。極力政治色を払拭した団体で、今後、在日香港人の増加が予想されることから、協会では彼らの生活をサポートし、災害被災地支援に手を差し伸べ、日本人との交流を促進していく。ローレンスは日本生活が長い香港人の子供たちに広東語や香港の歴史を教えていく予定だという。
英国は「英海外国民(BNO)」パスポートを付与
日本への移住について、在日香港人グループ「香港の夜明け」は20年7月、一部の国会議員らとともに移住条件の緩和を含めた対応策の早期整備を日本政府に求めた。彼らは「民主主義の定着した日本は官憲によって突然、個人の利益が侵害されることもなく、香港人も住みやすい」と言うが、大多数の市民が英語を話せず、そもそも日本政府は移民の受け入れに消極的だ。
旧宗主国の英国はどうか。英国政府は香港の中国返還(1997年7月1日)以前に出生した香港市民に対し、「英海外国民(BNO)」パスポートを付与している。6カ月間ノービザで英国滞在ができ、中国・香港・マカオ以外の英国在外公館に保護を求めることができるが、英国への出入国の際は外国人と同じ扱い。英国内での居住や就労、市民権は認められていず、メリットはほとんどないことから香港人は積極的に「BNO」パスポートを申請してこなかった。