子供が苦手な会社員男性のもとに突然現れた異星人の少女。成り行き上で同居することになった2人が、トラブル連続な毎日を経ながら“家族”になっていく――そんなSFコメディが「ヤングアニマル」(白泉社)で連載中の『人類を滅亡させてはいけません』だ。タイトルからも分かるように、もちろんメインはフィクションのお話で、宇宙人の「娘」と地球人の「父親」のドタバタ劇なのだが、一方で作中に垣間見えるのが妙にリアルな新米パパの子育てエピソードだ。
宇宙人も登場するようなSFコメディの世界観の中で、なぜ疑似的な「父親の育児」のエピソードを描こうと思ったのか。原作者の高畑弓さんに話を聞きました。
◆◆◆
突然現れた宇宙人の女の子と、独身サラリーマンの邂逅
――「宇宙人の子どもを育てる独り暮らしのサラリーマン」というのはなかなかエッジの立ったテーマだと思います。なぜこういった話を描こうと思ったのでしょうか?
高畑 もともと最初は「疑似家族モノ」を描いてみたいという思いがあったんです。要は、血がつながっていない家族の話をやってみたくて。それで企画を考えたりとかしているなかで、せっかくなので親と子が“遠い位置”にいた方が2人の関係性がより読者に伝わりやすいだろうと。それならいっそのこと、もう地球人じゃなくていい。宇宙人にしちゃおう、ということで出てきたのがこのアイディアでした。
――なるほど。「疑似家族モノ」をやろうと思ったのにはなにかきっかけがあるんですか?
高畑 個人的な考えではあるんですけど、「血の繋がり」と「過ごした時間」なら、僕は後者の方が大切だと思っているんです。
ニュースでも創作でも、「親と血が繋がっていないのが分かってショックを受ける」みたいなシーンがあるじゃないですか。そうすると結構、みんな生んでくれた親のことを知りたがりますよね。もちろん僕はそういう経験があるわけではないので、その気持ちには100%なり切れないんですけど、想像してみると自分がその立場でも「知りたいな」という気持ちにあんまりならないだろうな…というのがあって。やっぱり僕は血がつながっていなかったとしても、育ててくれた親の方が「本当の親」と感じるだろうなという思いがあったんですよね。なのでそういう「一緒に過ごした時間が作る絆の物語」を描きたいと思ったのがきっかけです。