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父はあの“8時半の男”! 歌謡曲の作詞・作曲家女性が秋葉原で立ち食いそば屋をオープンした「納得の理由」とは?

2021/04/27
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 コロナ禍で消えていく立ち食いそば屋が多い中、2021年になって新たに誕生した店もわずかながら散見される。矢口渡の「まるび」、神田駅から近い鍛冶町2丁目の「立ち喰い蕎麦 酒処 一久」。そして、今回紹介する台東1丁目の「清水や」は2月22日にオープンしたばかりの店である。

「清水や」はJR秋葉原駅昭和通り口から浅草橋駅方向へ進み、清洲橋通りを左折してスーパー・ライフを左手にみながら神田和泉町交差点を渡った先にある、小さな立ち食いそば屋である。4月中旬のよく晴れた平日午前10時過ぎ、さっそく訪問してみることにした。

神田和泉町交差点の先に「清水や」はある

 紺色の看板に白地の「そば 清水や」という文字が目立つ。入口外には「かき揚げそば」(440円)、「春菊天そば」(470円)、「げそ天そば」(490円)、セットメニューがカラフルに宣伝されている。どんな味なのか期待が膨らむ。

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紺色の看板に白地の「そば 清水や」
入口外にはセットメニューなどがカラフルに宣伝されている

 格子戸の扉から入店すると「いらっしゃーい」と女性スタッフの声が聞こえてきた。店内は丸椅子のカウンターと立ち食いのカウンターが左右に分かれていて、アクリル板で一人ずつ区分けされていた。入口の扉は常に開けられていて、換気扇もフル稼働中である。

 お店のスタッフは全員女性である。

「立ち食いそば屋では女性スタッフだけの店はうまい」というのが通説である。大和市の「そば処あさひ」、金町の「そばっ子」、足立区島根の「たまも」もたしか女性スタッフだけで営業していたと思う。

店内は丸椅子のカウンターと立ち食いのカウンターが左右に分かれている
セットメニューも豊富

 少し緊張しながら券売機で「Aセット(ミニカレー+そば)」(600円)を買い、トッピングに「かき揚げ」(120円)を選んで注文カウンターに持っていくと、そこにはたくさんの揚げたての天ぷらがバットに並んでいた。

 店長の宮田純花さんに今日の天ぷらは何があるかを聞いてみると、すぐににこやかに教えてくれた。

「手前から、ちくわ天、舞茸天、春菊天、げそ天、にら天、その奥は、鶏天、えび天、かき揚げ、ごぼう天かしら…」

 どれもカラッと揚げられていて油切りも十分にできている。人気の天ぷらを聞いてみると、「かき揚げ」、「げそ天」、「春菊天」あたりだという。注文が出来上がる間に、宮田店長に開店の経緯などを質問してみることにした。

店長の宮田純花さんをはじめ女性スタッフで元気に営業中
天種も豊富、ニラ天、ウインナー天もある

コロナ禍に立ち食いそば屋を開店した理由はシンプル

 コロナ禍に開店するのは勇気のいることでは、と聞いてみると、いたってシンプルな回答が返ってきた。

「今が一番厳しい時期だと思い、この状況で耐えることができれば、どうにかなるのではと頑張ってみました」と力強いコメントだ。

元気でシャキシャキの神田っ子の宮田店長

なぜ立ち食いそば屋なのか、そして修業はどこで?

 なぜ立ち食いそばを選んだのか聞いてみると、小さい時の記憶に起因するようだ。

「小さい時は神田三崎町に住んでいたので、親に連れられて『かんだやぶそば』や『神田まつや』にずいぶん食べに行きました。そんなことからそばが好きで、いつか大衆的なそば屋をやりたいと思っていたのです」

 なるほど、宮田店長はシャキシャキの神田っ子だったのだ。そして、宮田店長は修業せず、独学で味を覚えていったそうだ。

「特に修業はしていません。立ち食いそばが大好きなので、ほとんどの人気店に食べに行き味の形を学びました。幸いにも、天ぷらは母に手伝ってもらって、技を教えてもらって試行錯誤して完成しました」

 なるほど、お母さんも厨房に入って手伝ってもらっているようだ。