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刑務作業と技術伝承

 2015(平成27)年から、大阪刑務所では受刑者の状態に合わせた刑務作業を行わせるため、前述したとおり、工場を3つのタイプに分けた。

 まずAタイプは一般の受刑者が刑務作業を行う工場だ。刑務官が「天突き用意! はじめ!」と叫ぶと、受刑者たちは「ヨイショ、ヨイショ!」と掛け声をあげながら両手を上に突き出す運動を始める。刑務作業前の準備として行われているのが、この「天突き体操」だ。身体を温めることで、けがの防止にもなるという。

 そして刑務官が「よし! 作業はじめ!」と叫ぶと刑務作業が始まる。ここで受刑者が作っているのはカーテンレールだ。電動ドライバーを使いこなし、手際よく組み立てていく。大阪刑務所での刑務作業は、このような民間企業からの受注のほか、地元・堺市の伝統工芸品の敷物「手織緞通」の製作も行われ、技術伝承のために一役買っているという。

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刑務作業のレベルを落とさないとついていけない

 Bタイプは何らかの障害がある受刑者だ。工場に到着すると作業着に着替えるのだが、その時間も普通以上にかかる。サンダルから靴に履き替えるのですら非常に時間がかかっていた。Bタイプの工場では、受刑者が長い時間、椅子に座れないため、畳の上で刑務作業をする姿もあった。こうした光景は他の刑務所の工場では、あまり見られない。

 作業の様子を見ると、ある受刑者は袋から小さなスプーンを取り出す作業を延々と繰り返す。さらに隣の受刑者はフォークを束にして袋に入れる簡単な作業をしている。

 彼らが行っているのは、製品の不良を見つけ分別するというごく簡単な検品作業だ。実は懲役刑を科せられた受刑者は、刑務所内で何らかの刑務作業を行うよう法律で義務付けられている。だが、現実には刑務作業のレベルを落とさないと、ついていけない受刑者が増えつつあるのだ。担当刑務官が説明する。

「ほかの工場では1回の指導でできますが、この工場では何度も指導を繰り返し、わかりやすくしています。意思疎通が困難な受刑者も多く、体調面については自ら訴えることが少ないため受刑者が出すサインを見逃さないように心がけています」