意思疎通が困難な受刑者
そして大阪刑務所では、さらに軽い作業を担当するCタイプの工場も存在する。それは高齢者や何らかの疾患を抱えた受刑者を集めた「養護工場」だ。作業内容も紙ナプキンを折るなど単純な作業のみを行う。取材時には37人の受刑者がいたが受刑者の平均年齢は70歳、そのほとんどが60代から70代だ。
「一列、前へ進め!」
刑務官が号令をかけると1日40分間設けられている運動の時間となる。養護工場で作業する受刑者たちの運動時間は、他の工場とは異なった雰囲気に包まれる。通常の受刑者のようにグラウンドではなく、養護工場の受刑者たちは周囲を白いフェンスで囲まれた狭いスペースでの運動となる。言い方はよくないが、それはまるで鳥籠のようだった。
運動する者は少なく、ほとんどが日光浴といった感じだ。さらには雑談をしたり将棋を指すなど、その光景はさながら高齢者の福祉施設の庭先を彷彿とさせる。
一方、簡単な検品作業を行うBタイプの工場では午前中の刑務作業が終わり、受刑者たちが楽しみにしている昼食の時間となっていた。この日の昼食の献立は、麦ご飯にチキンカツ、バターコーン、鮭と根菜の味噌汁。皆が黙々と食事を口に運ぶ傍らで手先が不自由なのか、食べるのもおぼつかない受刑者の姿もちらほら見られる。食べ物を口に運ぼうとするが、ぽろぽろと下に落としてしまう。
食後は休憩時間になるが、高齢受刑者たちは雑談にも加わらず、午前中の作業に疲れたのか居眠りをしていた。簡単な刑務作業でも、ようやくこなせている状態のようだ。
ゲームする金欲しさに空き巣へ
担当刑務官に聞く。
──社会に復帰した際、適応できない受刑者の割合はどのくらいなのでしょう?
「6割から7割近くはいると思います。社会に出て、法律を遵守すること、当たり前のことができない受刑者が多いので……」
さまざまな原因から、社会に適応できず、結果として再犯を繰り返し刑務所に戻ってくるという。われわれはその中の一人、50代の受刑者に話を聞くことができた。
──服役するのは何回目ですか?
「10回目です」
──今回服役することになった罪名は?
「窃盗です。知らない人の家に入って、現金とかを取って……」
80代の母親のもとで生活し、お金には困っていなかったというのだが、5万円ほどを盗んだという。今回は出所後、1年も経たないうちに刑務所に舞い戻ってきてしまった。中学卒業後、工場で働いたり清掃の仕事などをしていたが、どれも仕事は長続きしなかったという。その理由を尋ねると、
「自分でもわからないです。違う仕事をしたいなと思ってしまい……やっぱり、上の人に怒られたりしたら、すぐに嫌になってしまって」
そして再犯の理由を聞き、私はあきれてしまった。
「ゲームとかするお金が欲しくて……」
──ゲーム? ゲームセンターとかですか?
「そうです、遊ぶお金がどうしても欲しくて……。家に帰るとまた何か言われるかなと思うので、それだったら、家に帰らないでどこかの旅館に泊まってと……」