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「ゲームするお金が欲しくて…」語られた50代受刑者の空き巣理由 社会復帰後も半分以上が適応できない“刑務所のリアル”

いま刑務所で何が起こっているのか 大阪刑務所編

2021/05/08

genre : 社会

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「今度はしたくなったら、ちゃんと家でお母さんに言ってから…」

©iStock.com

 彼は若いころから、ゲームセンターに入り浸り、そうした遊ぶ金欲しさから空き巣を繰り返し、10回も服役することになってしまったという。

──そのときは働こうと思わないのですか?

「盗んだほうが早いかなと……」

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“盗んだほうが早い”という言葉に罪の意識は全く感じられない。出所後の目標を聞く。

「お母さんも高齢やし、同じことを繰り返していたら、お母さんの死に目にあえないか、わからないですし、やっぱり今回を最後にして社会で頑張っていこうかなとは思います」

──またゲームしたくなるんじゃないですか?

「今度はしたくなったら、ちゃんと家でお母さんに言ってから、ゲームセンターに行こうかなと……」

 彼のように繰り返し窃盗をした場合、常習累犯窃盗罪で裁かれる。今回は懲役3年6か月だ。被害額が少ない場合でも常習性が問われ、刑期が長くなることも多く、刑務所の高齢化の一因とも言われている。

「ぎりぎりで福祉制度に乗りきらない、でも問題をかかえている」状態

 さらに、もう一人。

──刑務所で服役するのは?

「10回くらい……恐喝とか窃盗とかですね」

 60代までに10回もの服役を繰り返した受刑者。高齢になってもなお、再犯を繰り返す理由を尋ねる。

「ギャンブルに走った傾向がありました。お金もすぐなくなりますし……、仕事も続かないっていう」

 彼は社会に戻るたびにギャンブルに溺れ、生活そのものが破綻していたという。法務省によると取材当時(2017年)、受刑者の中で再犯者の割合は48%と過去最高を記録した。年々犯罪者の数自体は減る一方で、再犯を繰り返す受刑者が「固定化」しつつあるのだ。

 高い再犯者率、そして受刑者の高齢化という一朝一夕には解決しえない深刻な問題に直面する刑務所の厳しい現実。大阪刑務所で再犯受刑者を心理面などからサポートする刑務官は社会に適応できない出所者を受け入れる社会的な受け皿の必要性を訴える。

「ぎりぎりで福祉制度に乗りきらない、でも問題をかかえている人が結構多くいるというのが現状です。この人は困っている人なんだと気づいて手を差し伸べていくしかありません」

“社会を映す鏡”とも言われる刑務所。再犯と高齢化という刑務所が直面する問題は、決して塀の向こうだけの話ではないのだ。

「ゲームするお金が欲しくて…」語られた50代受刑者の空き巣理由 社会復帰後も半分以上が適応できない“刑務所のリアル”

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