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「1万円で無限に働かせる“聖職者”論」「部活大好き“BDK”」…元文科次官・前川喜平氏が語る《#教師のバトン》の真実

部活やモンペ対応は教師の仕事ではない

そもそも部活はやらなくてもいい

――拘束時間を減らすという意味では、部活動も大きな割合を占めています。

前川 部活動は本当に大きな問題です。そもそも部活動は、教育課程の外にある「課外活動」で、本来はやってもやらなくてもいいものなんです。なのに現実は、「生徒は必ずいずれかの部活動に所属しなくてはならない」というルールがある学校も多い。それほど部活動が学校生活の根幹を占めているパターンが多い。授業と授業準備だけで十分に重労働な先生が、さらに部活顧問を引き受けざるを得なくなっているんです。

写真はイメージです ©️iStock.com

――部活は強制入部だと思っていた人も多いと聞きます。

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前川 文科省では、教師の負担を軽減するために部活動指導員という専門のスタッフの配置を進めていますが、まだ実際の配置は進んでいない状況です。さらに、実は教師の部活動の負担が減らない理由は学校の内部にもあるのではないか、という声もあるんです。

部活大好き教師、通称“BDK”の存在

――学校の内部、とは何なのでしょう。

前川 部活大好き教師、通称“BDK”と呼ばれる教師たちの存在です。教師の本分は授業のはずですが、「部活動こそが学校生活の醍醐味である」と考える教師も無視できない数いて、中には授業では手を抜く人すらいます。そしてその中には、体罰も容認するような“体育会系”な教師も多く含まれています。僕の感覚では、“BDK”は学校の管理職にも多くいるのではないかと思っています。校長になる人って体育の教師が多くて、権力を好むと言うか、人を管理したがる雰囲気を感じることもありました。現場が部活動の負担で困窮しているのが明らかでも、学校のトップが部活大好きだったら、それを削減しようという動きは起きようがありません。

――それを指導する立場に文科省がいると思うのですが、どうして動かないのでしょう。

前川 文科省は部活の負担軽減にずっと取り組んでいるのですが、うまくいっていないのが実態です。部活動指導員などの施策も打ち出してはいますが、実際に学校に人は増えていない。それもそのはずで、教員や栄養職員の給与は国が保障しているけれど、部活動指導員を増やすためのお金が国からは出ないんです。各自治体で財源を用意してね、ってそれでは進むわけがないと思います。