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「末期がんすら告知されずに退院させられた患者さんも少なくない」 コロナでひっ迫する病床状況が招く“信じられない恐怖”

2021/04/27

genre : ライフ, 医療, 社会

 変異ウイルスによって勢いを増した新型コロナウイルス感染拡大の第4波が押し寄せるなか、病床のひっ迫が深刻化している。大阪府や沖縄県では、これまでに新型コロナウイルスの重症者向けの病床使用率が100%に達したと報じられている。こうしたなか、大阪府や奈良県は、改正感染症法に基づき、医療機関に対して病床確保を要請している。

 しかしその一方で、非コロナ患者が不本意に病床を奪われる例も増えていくことになりそうだ。

とにかく急いで退院させたがる医師

「面会謝絶でご家族に会えないせいなのか、認知症の症状が出はじめている。退院させてあげてはどうか?」

 昨年8月、大阪市在住の西口朱美さん(仮名・55歳)が、市内にあるA病院に入院中だった86歳の母親を自宅に連れ帰ったのは、主治医のそんな勧めがあったからだ。

©️iStock.com

「2019年に起こした脳梗塞で半身麻痺になった母は、約1年半にわたって入院していました。私はほぼ毎日、面会に行っていたのですが、2020年5月からはコロナ対策の一環で面会謝絶になり、3か月ほど会えていない状況でした。母と意思疎通できるうちにしておきたいという思いもあり、退院させることにしたんです」

 その決断を主治医に伝えると、わずか4日後に退院日が設定されたという。

「介護用のベッドの設置など、自宅の準備が整ってから退院させたいと告げたのですが、お医者様は『特別な準備は必要ない。寝床もしばらくは布団でも問題ない』と。とにかく急いで退院させたいようでした」

 しかし、自宅での母の介護は西口さんの想像を絶するものだった。

再入院は「ベッドが満床だから無理」だと言われ……

「退院した日の夜のこと。私は、母の絶叫で目が覚めました。何事かと思って飛び起きると、母が自室から台所まで這い出してきていて、暴れているんです。昼間とは違って、私のことも全く認識していないようでした。こんなに体力があるのかと思うほどの暴れっぷりで、おとなしくなるまで2時間ほどかかりました。その日だけではありません。同じことが毎晩のように続いたんです。まさかここまで認知症が進んでいるとは、お医者様からも全く聞いていませんでした」

 慢性的な睡眠不足に陥った西口さんは、勤務先のはからいによるリモートワークにも支障が出るようになってしまった。限界を感じた西口さんは、退院からわずか3週間でA病院に母親の再入院を申し入れたというが……。

「もうベッドが満床だから無理だと。ほかの病院を紹介してもらうようにもお願いしたのですが、主治医の先生に『コロナの影響もあり、どこもすぐには難しい』と言われてしまいました」(西口さん)

 結局、再入院はあきらめ、西口さんの母親はグループホームに入所することとなった。退院からわずか2か月後のことだった。