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「グループホームの費用は、毎月約13万円。入院させていれば6万円程度だったので、経済的負担は倍以上になりました。それよりなにより、たらい回しにするようなことになって母に申し訳ない。お医者様が、母の病状をもう少し丁寧に説明してくれていたら、退院させることはなかったでしょう。後から知ったことですが、去年の8月には大阪府はコロナ感染者のための病床確保が課題となっていて、A病院でも、優先度の低い入院患者に退院を促していたようなんです。コロナ感染者への対応ももちろん重要ですが、だまし討ちのような形で特定の人にだけ負担を強いるようなやり方は、正直、納得がいきません」

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在宅医療にまで影響 週10人ペースに膨らんだ新患受け入れ

 さらに死が近い、末期の入院患者も、コロナ病床確保のために続々と病室を追われている。首都圏にある在宅医療専門クリニックの院長(40)が明かす。

「コロナ禍以前には、新患の受け入れは一週間に3、4人程度でしたが、昨年5月ごろから急増し、1週間10人程度の新患が入ってくるようになった。去年の秋ごろから年末にかけ、一時的に新患の受け入れ数が落ち着いている時期もありましたが、今年に入って第3波がピークに差し掛かる頃になると、再び週10人ペースが続くようになりました。そのうち7、8割が、入院先から退院したばかりの末期がん患者で、東京大学医学部附属病院や東京医科大学病院、がん研有明病院など、都内の大病院からの患者さんもいます。通常なら、緩和ケアを受けながら病床で最期を迎える可能性が高かった方々ですが、ご家族に聞くと『面会謝絶でご家族と会えないのではご本人も寂しいはず。家で看てあげたら?』などと言われ、入院先から退院を促された結果、在宅でのケアを選択したというケースが多い」

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 同クリニックの新患増加のタイミングは、まさに東京都の病床使用率と合致している。コロナ病床確保を目的に、“追い出された”患者も多く含まれていると見ていいだろう。