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《僕と契約して、魔法少女になってよ!》新作発表の「魔法少女まどか☆マギカ」が放送10年たっても熱狂を生む理由

《僕と契約して、魔法少女になってよ!》新作発表の「魔法少女まどか☆マギカ」が放送10年たっても熱狂を生む理由

2021/04/29
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「蒼樹うめ」と「虚淵玄」 事前情報の少なさと飛び交った憶測

 実は同作、当時から放送前の情報が薄い作品でもありました。女子高生の日常を描いた「ひだまりスケッチ」の作者・蒼樹うめさんがキャラクター原案、ダークな作品を得意とするゲーム会社「ニトロプラス」の虚淵玄(うろぶち・げん)さんがシリーズ構成と全話の脚本を担当することから、どんな作品になるのだろう……的な期待感はありましたが、何せ本当に情報が少ない。

 私自身、あまりにも放送前の情報が少ないので、アニプレックスの担当者に「情報が少ないけれど、出せないの?」と問い合わせたこともありました。「すみません。それだけしか出せないのです」という答えで、困ったことを覚えています。

 心の中では「虚淵さんの作風を考えるとキャラクターが次々死んだりするのかな?」という気持ちはよぎったのですが、アニメの公式サイトに虚淵さんが「皆様が暖かく幸せな気持ちで一杯になってもらえるよう、精一杯頑張ります!」とコメントをしていたこともありますし、「それならキャラクターデザインに蒼樹さんは起用しないだろう。ミスマッチになるし」と思い込んでいました。結果的に、ものの見事にだまされた一人となってしまったのです。

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 もちろん事前情報を絞ったのは意図したこと。あえて情報を絞ってストーリー展開に注目を集めようという一種の賭けだったのです。アニメは第1話を見てもらうために事前の期待感をあおるのが一般的ですから、そうした手法も含めて斬新でした。

 同作が名作とされるのは、作品の出来もそうですが、従来のアニメの仕組みにとらわれず、視聴者の“常識”を良い意味で裏切ったことにあるでしょう。