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黄金時代を知る男・川口和久氏が語る「 優勝を知る参謀・河田雄祐ヘッドの人間力・野球眼」

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/18
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「伊原さんと雄祐は凄く似ていると思います」

「打者走者とは」「1塁走者とは」「2塁走者とは」。ホワイトボードを背に、伊原は理路整然と説明を加えた。

「ものすごく新鮮で、もっと早く知っておきたい内容でした。書き留めたノートは、遠征のカバンに入れて何度も見返しました。もう29歳。ノートに書いたことをミスしたら恥ずかしい年齢でした。内容は、基本の徹底でした。これができた上での応用だと感じました」

「実戦で覚える」「野球センス」「意識の問題」。野球界では、このような言葉で済まされることも少なくない。しかし、基本的なことを理論立てて確認する。そのことによって、プレーの精度は高まり、応用も可能となってくるのである。

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 だからこそ、河田は、基本を何度も選手に説く。「口酸っぱく言うこと。くどくなっても言い続けること。記憶に自信がなければ、ノートに書け。そう言ったこともあります」。

 あたりまえの共通認識を、言葉にして徹底する。その認識を共有してこそ、チームは一体となって戦えるのである。

河田雄祐ヘッドコーチ ©時事通信社

「まさにその通りですよ」。電話口の川口の声が弾んだ。「伊原さんと雄祐(河田ヘッドコーチ)は凄く似ていると思います。三塁コーチでランナーをまわすとき、通常は、さり気なく腕をまわします。あれが同じです。アグレッシブにホームに突入させるときは、腕をダイナミックにまわしますが、通常は、さらりとまわします。あれはね、「これでホームに帰るのはランナーとしてあたりまえだよ」。そんなメッセージだと思います」。

 そういえば、2016年、河田が何度も口にしていた言葉が「凡事徹底」だった。誰が呼んだか「明るい小姑」。選手に注意を促す明るい声が、逆襲の上昇気流を生み出すに違いない。そして、新型コロナが収束し、シーズンオフを迎えれば、あの明るい声で「先輩」と語り合うことだろう。もちろん、肉の焼き加減はミディアムレアである。

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