昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「鳴らされたクラクションで激高する男」をラッセル・クロウはどう見たのか

映画『アオラレ』ラッセル・クロウ(俳優)インタビュー

2021/05/14

source : 週刊文春

genre : エンタメ, 映画

 一見簡単そうに見えるものが、意外にもとても難しかったりする。オスカー受賞歴をもつ大ベテラン俳優ラッセル・クロウは、最新作『アオラレ』で、それを再確認した。

女性ドライバーに復讐するアオリ男

 90分のアクションスリラーでクロウが演じるのは、下道で後ろの女性ドライバーにクラクションを鳴らされたことに怒り、執拗なまでに復讐をするアオリ男。彼の名前が一度も出て来ないのも、素性がわからない、たまたま出会しただけの相手という設定にふさわしい。

©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

「僕は演技の仕事を1970年からやってきたんだ。映画の主役も30年以上やっている。そんな中で学んできた役作りのコツは、自分が演じるキャラクターの感情面の“余白”を埋めていくこと。『ビューティフル・マインド』のジョン・ナッシュや、『ザ・ラウデスト・ボイス-アメリカを分断した男-』のロジャー・エイルズはとくに複雑な実在人物で、時間をかけてその作業を積み重ねていった。だが、この男に対しては同じことができないんだよ。この男には思いやり、他人への共感、ユーモアのセンス、魅力というものが、一切ないから。こいつには人間性が完全に欠如しているんだ」

いつも怖いと感じるものに最も魅力されてきた

 役者はいつも、自分が演じるキャラクターが何らかの成長、変革をしていくストーリーに魅力を感じるものだ。しかし、『アオラレ』の男には、それもない。脚本を読んだ時のクロウの反応も、「こんなの、やるわけないだろう」だった。 その一方で、なぜかこの脚本は頭を離れなかったのである。

「その時、僕はたまたまロサンゼルスにいて、多くの業界仲間と会う機会があった。会話の流れで『今どんな脚本を読んでいるのか』と聞かれると、ほかにも脚本はたくさん読むのに、なぜかいつもこれを出してきてしまったんだ。内容を聞くと、役者仲間はみんな『面白そうだね』と言う。そのたびに僕は『そう思う? 本当に?』と驚いたよ。そして、自分が何を見逃しているのかを考えたんだ。答えは、自分はこの役の難しさを恐れているのだということ。皮肉にも僕は、いつも怖いと感じるものに最も魅了されてきた。キャリアを振り返っても、それは明白。今回も同じだったのさ」