男性が見ているのは脂肪⁈
中野 気になるでしょ。前頭前野なんです。脳に帯状皮質というものがあってその一部で処理している。その人の言動がおかしくないかとか、言葉遣いとか、振舞いとか、この人は自分の人生にとってどんな人なのかみたいなことを判断するところです。
内田 なるほどね。やっぱりビジュアルは二の次なんですね。
中野 一方で、男性は視覚を使っている。見た目で選んでいます。どこを見ているかというと、くびれ。
内田 くびれ? そんな面白いとこ見ているの?
中野 これは統計だから、俺は脚だとか、俺は谷間だとか、いろいろな人がいると思うんですけどね。有名な実験があって、男性にいろいろな女性の写真を見せると、ウエストとヒップの比率が0.6:1から0.7:1の間に収まる人の写真が選ばれる確率が高いんです。さらに、そういう女性を選ぶとどんなメリットがあるかという追跡調査もなされているんですよ。産まれてきた子どものIQを調べるというすごい実験をしていて、この0.6~0.7の比率の女性から産まれた子どものほうがIQが高いのですよ。
内田 それはどういう理由なんでしょう。
中野 詳しい機序は、まだブラックボックスではあるんだけれど、脂肪が関係しているということがいわれています。人間の身体の脂肪は全部同じ種類の脂肪ではなくて、女性の身体の場合、太腿とかお尻の脂肪が、子どもの脳を育てるのに必要な材料と同じ種類の脂肪なんです。男性はそれをいっぱいつくれる身体の女性を選んでいるのではないかといわれています。
内田 へえ~。
中野 それに比べると、女性による男性の選び方は、すごく認知的ですよね。
内田 なぜだろう。
中野 たぶん、出産という作業は命がけで、自分がもしかしたら死ぬかもしれないので、子育てしてくれる男を探したいのではないかという人がいます。
内田 面白い。知れば知るほど人間って、いかに生き延びるか、その最適な方法を試行錯誤しているだけに、何かすごく切ない。
中野 そうね。どこかの時点で家族という仕組みを発明して、どうやら家族をつくったほうが生き延びる確率が上がるらしいぞということで、パーッと広まったんでしょうね。しかし、いろいろなことが社会的に変わりつつある昨今ですよ。あまり人と接するなと言われたり、離婚率もすごく上がって3分の1は離婚する時代です。生涯未婚率も2040~50年ぐらいには、半分の人が結婚しないという時代になってきました。そんなとき、「家族」はどう変わっていくのかということを語り合うことができたのは、大変意義があったと思うんですよね。こういうかたちで本を出せたのは、すごくうれしいです。