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浮気、不倫、セクハラ案件もあったけど…「デュエットソングの歴史」に見る“戦後ニッポン”の価値観

2021/05/06
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 平成初期の文化の発信地「渋谷」という場所名を取り入れたのもポイントを押さえているし、パートナーの菊池桃子のセリフ「あれ、買っちゃおうかな」もバブルの余韻を感じさせて最高だ。

 そして男女掛け合いデュエットソング衰退期の1990年代後半に生まれた、数少ない名曲が、1999年の浜崎あゆみ&つんくが歌った「LOVE~since 1999~」。両者の湿気たっぷりの声に、ムード歌謡に近い色気を感じて好きだった。

令和のデュエットソングはどうなる?

 その後も多くのデュエットソングが誕生してはいるのだが、あまり一つのジャンルとして強い印象はなくなったのも事実。多分、「feat.(フィーチャリング)」「with」表記が増えたのも、一つの大きな要因だろう。恋愛ソングというより「自分の価値観」を歌う流れになったというのもある。

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 ネットがコミュニケーションの要となった2000年以降は、人との対面を重視し、場所にステイタスを感じるという「束縛・制約を楽しむ文化」は薄れていった。

浜崎あゆみ ©getty

 ただ、だからこそデュエットソングを聞くと、ネット以前の時代の風景がなんともリアルに見え、ここ40年ほどの価値観の急速な変化に驚いてしまう。

 聴くだけで時代の変化が見えてくるのが、流行歌の面白さ。これからも、「令和」「風の時代」を感じる新しいデュエットソングがどんどん生まれてほしい。

 今回妄想タイムトラベルをして、ハーモニー、ツインボーカルというのはドラマ性を感じる魅力的な歌唱スタイルであるとつくづく思った。

 新しい様式が出て、古い価値観が淘汰されていく時代。カラオケ文化も今まで通りとはいかないが、「密を避けながら楽しめる」新たな機能や方法が出てくるだろう。

 歌は世につれ、世は歌につれ。伝えるパッケージやハードは変われど、歌そのものに「オワコン」という文字はない。往年の名曲にパワーをもらい、進化していくのみである。

 皆さんの心のデュエットソングはなんでしょうか。

浮気、不倫、セクハラ案件もあったけど…「デュエットソングの歴史」に見る“戦後ニッポン”の価値観

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