「町の女だな。甘い雰囲気だね!」
三人とも家業の焼畑耕作を手伝いながら、自分らしい生き方を模索している。B(二五歳)は通信制大学で会計を学ぶ。その従弟P(二七歳)は、所有するピックアップで農産物の運送にいそしむ。そしてPの妹G(一七歳)は、村に伝わる詩歌の聞き書きに励む。
通りに面したテーブル席につくと、私たちは米粉麺とライスを注文した(写真)。Bは、スマホをチェックしたあとで、村びとが蜜蜂に刺されたとか、山刀を失くしたとか、他愛のない話をした。
ひとしきり食べたあと、Bが、スマホの画面から顔を上げ、「ちょっと中座してよいか」と訊いた。皆がうなずくと、Bは、「面倒だなあ」とつぶやいてから、食堂の自転車を借りて出ていった。Pはニヤけ顔で「町の女だな。甘い雰囲気だね!」と言った。
しばらくしてPの携帯電話が鳴り、Bから「女子が二人いるから、お前も来い」という内容の電話があった。助太刀するよう私が背中を押すと、Pは食堂のバイクを借りて飛び出していった。
「他民族の女性が相手なら、とやかく言われませんから」
食堂に残されたGと私は、タイ風焼売(シューマイ)を追加。私が「女性の友だちが町にいるなんて頼もしい」と感心していると、Gは「他民族の女性が相手なら、村内でとやかく言われませんからね」と言った。
Gは続けた。「私たちはふつう、同じ民族どうしで結婚します。それまでは異性と広く浅く付き合います。気に入っても手に触れるくらい。異性の友人たちを数年間よく観察し、それから特定の相手を決めます」。私は、「窮屈」というのとは少々違うなと思った。
二人は一時間足らずで戻った。「通信制大学のスクーリングで知り合った友人たちです」とBは話した。期待外れの開けっぴろげな会合だったらしく、拍子抜けしたような表情だ。他方Pは、会合を堪能したと見えて、すっかり日も暮れたのにサングラスをかけていた。Gは、二人の中座について何も触れず、また別の話をした。
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