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「想像を超えるフィジカル」カーリング女子世界選手権、名門・北海道銀行メンバーの素顔とは

「想像を超えるフィジカル」カーリング女子世界選手権、名門・北海道銀行メンバーの素顔とは

五輪枠獲得を目指す戦いは厳しくなったが、「最後までしっかり突破を目指す」

2021/05/05
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進化し続ける菜食アスリート

 フォルティウス結成からの10年で、もっとも環境や立ち位置が変化したのはセカンドの近江谷杏菜かもしれない。バンクーバー五輪にチーム青森のメンバーとして出場した後も2014年まで青森でプレーを続け、2014/15シーズンにフォルティウス加入。柔軟なショットを持ち味にスキップ以外のポジションをすべて経験するなどチームに尽力した。

セカンドの近江谷杏菜(右)とサードの小野寺。世界でもトップクラスのパワースイープを誇るチームの中核だ ©️JCA IDE

 その豊富なキャリアを活かす形で2018年からはアスリート委員も務める。まだベテランという域ではないかもしれないが、カーリング界を牽引する存在であることは間違いない。

「何年か前までは自分のプレー、チームが強くなるっていうところでいっぱいいっぱいでしたけれど、そこからさらにカーリング界に恩返しであったり、下の世代の子たちの環境整備をより考えるようになりました。日本には素晴らしいカーラーがたくさんいるので、その人たちと力を合わせながら取り組んでいきたいです」とは本人の談だが、自覚は十分だ。

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 もともと好奇心と向上心が旺盛なタイプだ。趣味について「YouTubeみてます」(吉村)、「甥っ子と戯れてます」(小野寺)という、おこもり系のメンバーが多い中で、「料理と海外ドラマとバスケ観戦」と多趣味でアクティブ。昨年からは、植物由来の食べ物を中心とするプラントベースの食生活を始めた。

「お肉を食べなくても食べなくても栄養って足りる」

「オフの間にスポーツ選手の友達と食事について情報交換している中で知って、Netflixのドキュメントに『ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実』というのを見つけて、それを観たんです。納得できる部分が大きかったのでとりあえずやってみよう、という感じでした」

 最初は効果があったのかどうか半信半疑だったが、夏場にトレーニングがスタートしても疲れにくいことを実感したと言う。

「これまでも食事のバランスや栄養はけっこう考えてメニューを組んでいたつもりだったんですけれど、身体が絞りきれない部分もあって。今の食事にしてからは身体が軽いです。お肉は大好きでしたし、私といえば肉!くらいだったんですけどね。今は(動物性の食品を)食べなくても栄養って足りるんだなと感じて、そのまま継続しています」

2月の日本選手権は稚内市内のゲストハウスを貸し切って、日々の食事もほぼ全食“詩織メシ”でチャージした ©️PASSPORT

 2月の日本選手権の間もチームスタッフのひとりで、アスリートフードマイスターの資格を有する赤川詩織コーチのサポートでベストコンディションを維持した。また、インスタグラムでは菜食専用のアカウント「channa_gohan」を開設し、公開している。カルガリーへ向かう機内でも、ベジリクエストの食事を紹介するなど、カーリング×菜食というニュータイプのカーラーへの注目はアイス内外で高まるばかりだ。