渡邊雄太の最大の武器は…
その成長はいまも止まっていない。ドラフト外入団ながら生き馬の目を抜くようなNBAでサバイバルを続けられているのは、紛れもなくハードワークの賜物だ。
渡邊の長所は日本人離れしたサイズ、スキル、持ち前の聡明さ、適応能力だけではなかったのだろう。最大の武器は、継続して努力できる辛抱強さ。それがあったからこそ、ここまで少しずつでも確実に前に進んでこられた。渡米以降はおろか、日本での高校時代から飛び抜けた存在ではなかった渡邊の成功は、後に続く多くの日本人選手たちに勇気と希望を与えたに違いない。
渡邊雄太の「次の目標」
もちろんその道のりはラプターズとの本契約でゴールを迎えたわけではない。すでに報じられている通り、新たな契約は2020~21シーズンを通じてのものではあるが、来季が保証されているわけではない。
来オフ、FA選手の交渉期間終了から3日後にはサラリーの一部である37万5000ドル(約4000万円)、開幕ロースターに入った場合にはサラリーの全額(176万2796ドル、約1億9200万円)が保証されるという契約内容だが、逆に言えば、来季までにその力を証明し続けなければ立場を失うことも十分に考えられる。念願の本契約を手にした後でも、渡邊の来季以降の立場が安泰になったというわけではまったくない。
しかし、そんな厳しい立ち位置も、ここまで来たらもう望むところなのかもしれない。26歳にして大目標の本契約に辿り着いた後でも、渡邊の向上心は止まるところを知らない。
「チームを勝たせられる選手になりたい。20~30得点を取ってくることが自分の仕事ではないと思ってます。今だったらベンチから出て、いつも通りまずしっかりとチームにエナジーをもたらして、ディフェンスをやって、リバウンドを取る。さらに最近良くなったオフェンスで積極性を見せ、そこからパスをさばいたりすることによって得点につなげることもできます。最終的にチームの勝ちにつながるプレーを、与えられた時間内でできる選手になっていきたいなと思っています」
こんな誠実な姿勢と明確なビジョンが変わらない限り、渡邊は成長する。ラプターズとの本契約はまた新たなスタート地点。NBAが舞台のサクセスストーリーがこれからどんな方向に向かっていくのか。バスケットボールファンの楽しみな日々はまだまだ続いていくのだろう。