メジャーデビュー曲「うっせぇわ」(詞曲・編曲:syudou)で一大センセーションを巻き起こした18歳の歌い手、Ado。

「もともと自分に自信がなかった」という彼女だが、迫力のある唸り声から繊細なファルセットまで一曲の中で様々な声色を使い分けるその歌声の表現力には目をみはるものがある。高揚感あふれるダンスナンバーの新曲「踊」ではラップにも挑戦。1曲だけの話題性に終わらず、シンガーとして本格的にブレイクを果たしつつある。

 果たしてAdoとはどういう人間なのか。コンプレックスや葛藤を抱えてきたというその内面に迫った。(全2回の2回目/#1を読む)

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(取材、構成:柴那典)

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「単純に、私は自分に自信がないんです」

——Adoさんは「うっせぇわ」を歌うにあたって、どんな表現をしようと考えましたか?

Ado 「うっせぇわ」という曲は怒りの感情を描いてる曲だと思うので。「社会人じゃ当然のルールです」という歌詞があるように、社会人の気持ちや不満をぶつけた曲にはなるんですけれど、私は歌った当時まだ高校生で、社会人ではなかったので。怒りを表現するために自分が感じてきた怒りや、言われて嫌だったことを思いだしたりして、怒りを怒りのまま表現しようと思って、自分の中でパワフルに歌ったつもりです。

「Ado」の公式YouTubeチャンネルより

——言われて嫌だったことというのは、どんな内容だったんですか?

Ado 今は全然気にしていないですし、大したことじゃないんですけど、活動していて知り合いから「夢見すぎじゃない?」とか言われたりしたことがあって。「そんなに私は夢見がちなんでしょうか」とか「現実を見ていないのか」と思ったことがありました。あと、自分は自分自身にコンプレックスを抱えていることが多くて、そのコンプレックスに対して自分自身に腹を立てることも多いので、それを思い出したりして歌いました。

——Adoさんが、そういう負の感情やコンプレックスを抱えるような性格に育ってきたというのは、どういうところが大きかったと思いますか?

Ado 単純に、私は自分に自信がないんです。自分のことを素晴らしいと思ったことは一度もないです。ふざけて「自分は歌が超うまい」って言うことはありますけれど、真剣に自分のことを愛しているとは到底思えなくて。むしろ、幼少期から今に至るまで、どうして私はこんなにおかしくて、愚かなんだと感じることが多いんです。頭がいいわけでもないですし、むしろ悪い方で、運動神経がいいわけでもなくて。唯一絵は得意だと思っていたんですけど、でもクラスにはもっと上手い子がいた。他の人に何か言われたわけではないですけど「私なんて大したことないんだ」って気付いたときがあった。自分は愚かで、何にもないスッカラカンな人間なんだと感じてきました。答えを間違えた時に消しゴムで全部消しちゃう癖があって、先生に「なんで消しちゃうの? 残さないとだめだよ」って言われたことがあったんです。私は間違えてたのが恥ずかしいから消していたんですけど、それを指摘されたことも恥ずかしくて。勉強だけではなくて、他のことでも訂正されることが多くて、自分が選んだものに自信がなくなってきて、他人に合わせたり、他人に流されるようになってしまった。そういう思いを抱えて、自分の言いたいことを隠してきたということは多かったです。