・ディカプリオと共に挑んだ最終オーディションで、ウィンスレットは彼の演技に感嘆。「たとえ私に役をくれる気がないとしても、彼には絶対にやらせなくちゃだめよ」とキャメロンに忠告した。
・SFXを用いてタイタニック号を再現するよりも費用が抑えられ、リアルな映像や演技が引き出せるとして、タイタニック号(全長269メートル)のほぼ実寸大(全長238メートル)となる巨大セットをメキシコの海岸に建造した。
・タイタニックのセットは、岸に面した右舷側だけが完全に再現され、海に面した左舷側は鉄骨や足場がそのままの状態だった。サウサンプトン港からの出港シーンでは、タイタニック号が左舷側で接岸されていた史実があることから、文字を鏡に写したような逆版にした乗務員の制服や帽子、看板を用意して撮影。そのフィルムを反転させて左舷側で出港する画を作り上げた。
実は「3つのバージョン」が用意されたエンディング
上記のように、さまざまな逸話があるが、なかでも無視できないのがエンディング。キャメロンが執心するあまり、〈劇場公開バージョン〉〈ロング・バージョン〉〈オリジナル・バージョン〉の3バージョンが作られていたのだ。
『タイタニック』は、1996年の北大西洋上で幕を開ける。タイタニック号と共に海底3800メートルに眠っているとされるダイヤモンド“青き海の心”のネックレスを探すブロック・ラペット(ビル・パクストン)らが、引き上げた金庫からそのネックレスを下げた女性の裸婦画を発見。そのモデルだと名乗りを挙げた102歳のローズが、ブロックたちの調査船を訪れ、ジャックとの出会いと別れ、沈没事故について語って聞かせるという形で物語が動き出す。そしてエンディングは、いずれのバージョンも老いたローズが回想を終え、閉じていた目を開くところから始まる。
(1)劇場公開バージョン
〈劇場公開バージョン〉は、海に投げ出された1500人のうち6人しか助からなかったこと、付近にいた20隻の救命ボートの1隻だけしか助けに来なかったこと、遭難信号を受信したカルパチア号に助けられたこと、そのままアメリカに渡ったことなどをブロックらに聞かせ、「彼(ジャック)のことは今まで誰にも話さなかったの」「主人にもね」「女って海のように秘密を秘めてるの」「彼(ジャック)は私の心の中に生き続けてるの」と続ける。
場面は潜水艇のショットを挟んで調査船の甲板へと変わり、ブロックがローズに同伴した孫娘リジー(スージー・エイミス)に「3年間、おれの頭はタイタニックのことで一杯だった」「でも何ひとつ分かってなかった」と語り、夜の海に目をやる。
さらに場面は調査船の船尾に変わる。柵を登る老いたローズが、沈没から84年間にわたって隠し持っていた“青き海の心”をタイタニック号が沈む海へと投げ入れ、万感の想いを込めた表情を浮かべる。そして、あの涙なしには観られないラスト・シーンへと繋がっていく。