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地の底にも差し伸べられる手を
番組の終わりの方に、リスナーからのメッセージという形で読まれた短いコメントだったにもかかわらず、「ラジオを偶然聴いた」といって、逮捕以来、初めて連絡をくれたかつての同僚たちが異常に多かったことに驚きました。もしかして、祭りのように大騒ぎする一連の薬物報道にウンザリしている人は多いのではないか? そう考えていた矢先、ピエール瀧さんに対する風向きもみるみると変わっていきます。
これまでの処分と同様に、出演作品の配信出荷の停止や、事務所の契約解除などはあったのですが、出演された映画の一つは、代役もなくノーカットで公開されました。そして、周りの人たちの反応も、これまでとは違ったものになっていきました。
電気グルーヴのメンバーである石野卓球さんは、一切謝罪をしない、というこれまでの常識を覆す態度を見せてくれました。このことについては、ワイドショーなどでかなり批判も多く上がりましたが、ファンからは大いに賞賛が集まりました。実はこれ、依存症の回復プログラムの中でも、かなり肝になる行為なのです。
薬物に問題がある当事者には、起こしてしまった事態を自分の問題として捉えることが何より大事なことといわれ、家族や関係者の謝罪は、残念ながら本人が自分の問題に向き合う際に、間に入り込んでしまう邪魔なものでしかないというのが依存症業界の常識です。それを、誰に聞くでもなく卓球さんはやってのけたのです。