子供を連れて家に遊びにこない?
「赤ちゃん教室で一緒になったアカリさん(仮名)というママ友がいました。その教室の他のママさんたちはいつもワイワイした雰囲気で私はあまり馴染めず、端っこのほうにいたんですが、反対側の端っこによく独りで座っていたのがアカリさんでした。
疎外されたような私たちは自然と話すようになり、LINEを交換して近況を報告するような仲になりました。
そんなある日、アカリさんから『子供を連れて家に遊びにこない?』といわれました。『いや、子供が泣いたりしたら大変だから』と断ったんですが、アカリさんは『子供を見てくれるベビーシッターの人に来てもらうので大丈夫』と提案してくれて、それならということでお家に伺ったんです。
お部屋に入ると、すでにベビーシッターと名乗る方がいらっしゃって挨拶をされました。
子供部屋に私の子と、アカリさんの子を寝かせると、シッターの方が『あとは私にまかせてごゆっくり』ということだったので、ふたりでリビングのほうでお茶を飲むことになったんです。
アカリさんは『子供を気にしないでゆっくりするのなんて久しぶり』と笑いながら、家族のことや学生時代のことなんかをお互いに話していました。
そこで、アカリさんから唐突に『3.11の震災のとき何をしてた?』と聞かれました。私は『普通に家にいて、すごく揺れて怖かった』みたいな話をしてたら、彼女が一枚の写真を取り出してきたんです。
そこには、津波で無残に打ち砕かれた街並に1軒だけ無傷で残ってる家が写っていて、アカリさんは『この家だけ守られてる。すごい奇跡だと思わない?』と真剣な顔で聞いてきます。
私も『奇跡の一本松』とかは、ニュースで見ていたので、そういう類の話なのかなって思って写真を見直したんですが、どこか違和感があって……。その1軒だけ残ってる家の部分が合成されたもののように見えたんです。
勧誘をされていると気付いた時には2対1
私が『うーん……』と黙っていたら、『奇跡の家でしょ? 私、その家に住んでた人を知ってるんです』と、ベビーシッターの人がいきなり話に入ってきたんです。
するとアカリさんも『この家の人は、ある力によって守られたんですよね?』とシッターの人と話しはじめて、二人は私に向かって『実はこの家族は“◎◎会”の生徒なんですよ』と言い始めました。
このあたりでようやく私はなにかの団体の勧誘をされているんだなと気付きました。
とにかく、この2対1の状況は危ないと思ったんですが、子供を預けているので、自分だけ帰るわけにもいかない。
なので、それから3時間くらいよくわからない話を聞かされて、『暗くなってきたのでそろそろ……』と子供を抱えてようやく部屋を出ました。
アカリさんのLINEはブロックしましたが、近くに住んでるのでどこかで会ってしまうかも、と思うと引っ越しまで考える毎日です」(村山さん)
個室に追い込まれて宗教の勧誘というのは、絶対に避けたいシチュエーションだろう。しかも家に遊びに来ないかという気軽な誘いに応じた結果だと思うと、その恐怖が余計に引き立つというもの。ママ友という微妙な距離感を利用した行為だ。