福岡で起きた「5歳児餓死事件」でクローズアップされた「洗脳ママ友」という新たなワード。

 同級生でも、仕事での付き合いでもなく、趣味も興味も違うのに、ただ同じ年頃の子供がいるということで繋がった「ママ友」という関係性と、言葉巧みに近づき、家族を崩壊させて幼い命まで奪うという凶悪な『洗脳』行為が重なった事件の経緯は複雑に思えるが、実は日常的によくあることなのかもしれない。

 そこで、大きな事件にまで発展はしていないものの、「あれは“洗脳”だったのでは?」という、実際に起きたママ友エピソードを取材してみた。(取材・執筆=素鞠清志郎)

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だんだん影響され、バサバサの髪に

 まずはパート勤務をしている主婦の田原美幸さん(38歳・仮名)の出会ったエコロジー洗脳ママ友の話。

「子供が小学校2年の時に引っ越してきて同じクラスになった、アキナさん(仮)というママがいました。

 それまで私には子供が保育園のころから仲の良い5人組のママ友サークルがあって、みんなで子供の服を着回したり、一緒に安売りのスーパー探しをするような庶民的な雰囲気だったんですけど、アキナさんは髪を後ろに結んでノーメイク、服は生成りのシャツとパンツ姿のナチュラル系。私たちとはちょっと雰囲気が違うかなと思ってたので、最初は距離があったんですけど、アキナさんの知り合いが有機栽培で作った野菜を配ってくれたりするので、だんだん仲良くなっていったんです。

 でも、アキナさんは『牛乳は子供に与えちゃダメ』とか、『合成洗剤は海を汚すから使わないほうがいい』といった主張をしてくるようになったんです。

 私は『そういう生き方もあるよね』という感じで、話を聞くだけだったんですけど、ママ友仲間のミサコさん(仮名)が、だんだん影響されていってしまって。

※写真はイメージです ©iStock.com

 ミサコさんは、アキナさんと一緒に遠くの自然食材のお店に通うようになったり、シャンプーを使うのをやめたとかで、バサバサの髪になってたり、徐々に雰囲気が変わっていきました。

 しばらくして、ミサコさんの子供が学校に来なくなったという話を聞いて、病気で入院でもしたのかと思って心配してたら、ミサコさんにばったり道で会ったので思いきって聞いてみると『息子はいま○○島に留学してます』と打ち明けてくれました。

家に引きこもるようになってしまった息子さん

 アキナさんに、子供は自然の中で育てるのが一番と勧められて、子供だけ田舎のお家にホームステイする『山村留学』をすることにしたそうなんです。

 その留学はいいものかもしれないけど、ミサコさんのお子さんは大人しくて、ホントに親しい友だちとだけ遊ぶようなタイプ。そんな子が、友達とも住み慣れた街とも離れて、誰も知らない山村で暮らすなんて大変だろうなって思いました。

 それから半年くらいたって、ミサコさんの息子さんは帰ってきたんですけど、向こうで何があったのか、暗い感じになって家に引きこもるようになってしまって……。

 その変貌ぶりをみたミサコさんは『私が間違ってたのかも』と、エコ洗脳が解けたようで、それからアキナさんとも距離を置くようになってましたね」(田原さん)

 エシカルもエコもSDGsも意識が高くて結構だが、他人に自分の価値観を押し付けるのは考えものだろう。