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 この事件をめぐっては、警察当局の幹部も、暴力団の複数の幹部も、「聞いたことがない」と口を揃えた。

女性を道連れに理不尽な事件も

 暴力団員の身勝手な男女トラブルから、今年2月には、女性が犠牲となる理不尽な事件が起きていた。

 熊本県八代市のアパートの玄関前で2月12日朝、女性(41)が刃物で刺されて殺害された。女性は首や腹などに刺し傷が確認され、大量に出血していた。腕には刃物から体を守ろうと抵抗した際にできる防御創があった。熊本県警は殺人事件として捜査、アパート近くの防犯カメラに写っていた男の行方を追っていた。

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熊本県八代市で死亡した女性が倒れていた現場アパート付近を調べる捜査員(2月12日) ©共同通信社

 事件の発生から3日後の同月15日、アパートから約1キロ離れた山中で、カメラに写っていたのと似た男が首をつって死亡しているのが発見された。

 その後の調べで、自殺した男は同市に住む元山口組系組長(71)であることが判明する。女性は生前、知人に「昨年秋ごろから、付きまとわれている」と話しており、組長がストーカー行為に及んでいたとみられる。

 男は6代目山口組の直参と呼ばれる直系組長だったが、2008年10月に絶縁処分となり引退していた経緯があった。指定暴力団幹部が背景事情について語る。

「山口組で直参といえば内部ではプラチナと呼ばれる特別な存在。それだけシノギ(資金)もあっただろう。しかし、ヤクザというものは辞めてしまえば、ただの人。収入は格段に少なくなる。極端な場合は全くカネがなくなることもある。今回の事件の女性との関係は分からないが、引退した後は失うものばかりで、(自殺したのは)将来を悲観してのことだろう」

 殺害された女性には、幼い2人の子供がいた。全く落ち度のない平穏な生活を送っていた女性を道連れにするという、あまりに身勝手、理不尽極まりないとしか言いようがない結果を招いた。(年齢、肩書きは当時)