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北陸新幹線“ナゾの通過駅”「安中榛名」には何がある?

2021/05/17
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1日のお客の数は?

 ただ、駅の周りをひとしきりうろうろしていて気になることがあった。まったく店という店がないのだ。だいたいどんな駅前であっても腐っても新幹線、コンビニのひとつやふたつあるものだ。ところが、住宅団地の中も駅前もどこを探してもコンビニもスーパーも見当たらない。お金を使えるところと言ったら、駅の中の駅弁屋(「峠の釜めし」を売っている)や飲料の自動販売機くらい。

 

 この町で暮らすとしたら、クルマで安中市街や高崎方面に出かけることが中心になるのだろうか。通勤はともかく日常の買い物に新幹線を使うのはチトきつい。

 それに、駅前から住宅のある区画までは急な坂がある。駅から帰るときはともかく、駅に来るときには徒歩だと急坂を登らねばならぬ。だから駅前の駐車場には多くのクルマが停まっていた。新幹線直結とはいったものの、つまりは安中榛名駅前のニュータウンも、群馬県内の他の町と同じようにマイカー必須のクルマ社会なのだろう。

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 安中榛名駅の1日のお客の数は2019年度のデータで284人(乗車人員)。北陸新幹線では最も少なく、同じJR東日本の東北新幹線などを加えても2番めの少なさである。使っているお客はほとんどが駅前のニュータウンに暮らす人なのだろう。彼らにとってはなくてはならない通勤の駅。そしてそれ以外の人にとっては通過しがちな新幹線の秘境駅。山間部に突如現れた新幹線の駅とニュータウンは、持ちつ持たれつの関係なのだ。

写真=鼠入昌史

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