「医療少年院というのは精神科病院だと思っていただくとわかりやすいでしょう。一般的には、医療少年院というのは意味があります。ですが、ある独特の性癖を持っている少年のような非常に特殊なケースに対しては、そもそも今の精神医学の中に、そういった人たちを治療して、性的傾向を修正するような治療技術自体がないのです。この点を踏まえ、どうすれば茨城の事件のような悲劇を防げるのか、市民ひとりひとりが考えて、国がルール作りを進めてほしいと思います」(精神科医の井原裕氏)
16歳で「女性を襲うのに性的興奮を感じていた」と証言
2019年9月に茨城県境町の住宅で起きた一家4人殺傷事件で、死亡した夫妻に対する殺人容疑で今年5月7日に逮捕された岡庭由征容疑者(おかにわよしゆき・26)。
岡庭容疑者は16歳だった2011年11月、猫を惨殺後に連続少女通り魔事件を起こし、殺人未遂容疑で逮捕された過去を持っていた。当時の裁判では、「当初は殺害し、首を持ち帰ろうと思った」「女性を襲うのに性的興奮を感じていた」などと証言。“独得の性癖”を満たすための犯行だったことが明らかとなった。
同事件の裁判員裁判で、検察は「再犯の恐れが極めて高い」と指摘していたが、岡庭容疑者には結局、医療少年院送致で更生を促す決断が下された。岡庭容疑者は2018年に満期で医療少年院を出所。治療を受けたにもかかわらず、それからわずか1年後に再び凶行に及んでしまった。
未成年者への刑事罰について定めた「少年法」の限界も指摘される中、再発を防止するためにどのような手段があるのか。獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科で教授を務め、埼玉県内の少年事件の精神鑑定を数多く担当している井原裕氏に聞いた。