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「“独特な性癖”を持つ少年を治療する技術はない」茨城一家殺傷 精神鑑定の専門家が指摘する少年法の“穴”

「“独特な性癖”を持つ少年を治療する技術はない」茨城一家殺傷 精神鑑定の専門家が指摘する少年法の“穴”

「再犯の恐れが極めて高い」少年はなぜ更生できなかったのか #1

2021/05/18

genre : ニュース, 社会

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韓国では法律でGPSによる最長30年間の監視が認められている

 一方、海外に目を向けると、イギリスやフランス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアなど様々な国で、犯罪者が出所した後に、再犯を防止するための法律が制定されています。特に顕著なのがアメリカと韓国です。

 アメリカでは「ミーガン法」と呼ばれる性犯罪者情報公開法が制定されており、性犯罪者の情報がデータベース化されています。1人ずつにコード番号を付けて、出所後も現在どこに住んでいるかなどの情報を追跡できるようになっており、ある州では、性犯罪者の出所(仮釈放)時や転入・転出に際して、住居周辺の住民への告知が行われるようになっています。

茨城県境町の被害者宅 ©文藝春秋

 また、韓国では、再犯のおそれがある性犯罪者に対し、GPS(全地球測位システム)による監視制度を導入しており、法律では最長30年間の監視が認められています。

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 再犯のおそれがある性犯罪者が、居住地から半径2キロの監視範囲から外に出たり、指定された制限区域に立ち入ると24時間体制で保護観察所に報告される仕組みです。この結果、再犯率は2008年の制度施行前が14.1%だったのに対し、施行後は1.7%と、8分の1以下にまで大きく減少しました。

少年法だけでは治安を守れない

 翻って日本の場合、少年院や刑務所を出所した後の治安上のフォローが欠落している点が制度上の致命的な欠陥です。少年の健全育成か、治安の維持か、という二者択一ではなく、両者を実現しなければなりません。少年法だけでは治安は守れません。治安を守るのはあくまで警察、保護観察所、裁判所などの治安当局です。

2011年の通り魔事件の時に警察が押収したナイフ ©時事通信社

 平時には制度の不備は見えてきません。例外的な事例が起きた時にこそ、制度の不備が浮き彫りにされます。「少年犯罪が減っている」という一般論を口実に、制度の未整備を正当化してはなりません。再犯防止に真剣に取り組むべきです。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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