ウディとスンニの関係
ミアの家の中でそんなひどいことが起こっているなど、ウディはまるで知らなかった。ミアは、「実子と養子が一緒に楽しく生きる幸せな家庭」のイメージを完璧に作り上げていたからだ。それに、そもそもウディは、ミアの子供たちに無関心だった。スンニは父であるアンドレとあまり時間を過ごすことなくニューヨークに来てしまったため、ミアは、ウディが家に出入りするようになった頃、ウディにスンニの父親のような存在になってくれないかと期待し、「アイスクリームでも食べに連れて行ってあげて」と何度も頼んだのだが、その都度断られている。
スンニはと言えば、ウディに興味がないどころか、むしろ嫌いだった。ミアのような意地悪な人間と付き合うような人だから、同類なのだろうと思っていたのだ。それで、ウディが来ると、スンニは今にもナイフを突きつけそうな態度を見せた。スンニの態度が少しずつ変わっていくのは、15歳になった頃だ。きっかけは、学校でサッカーをしていて、足首を捻挫したこと。
痛いのを我慢しながらなんとか帰宅してきたスンニを見て、たまたまミアの家にいたウディは心配し、医者に行くよう勧め、翌朝にはスンニを学校まで送っていってくれたのだ。「自分はいつも嫌な態度しか取らないのに、こんなに優しくしてくれるなんて」と反省したスンニは、それからはウディが家に来ると部屋から出てくるようになった。ウディがテレビでバスケットボールや野球の試合を見ていると、隣に座って、ルールを教えてもらったりするスンニを、きょうだいが冷やかしたこともある。ウディもスンニに打ち解け、家に来ると必ずスンニの部屋に立ち寄り、ちゃんと宿題をやっているか、学校はどうだなどと気にかけるようになった。スンニの16歳の誕生日パーティにも、文句も言わずに出席した。ミアの子供の誕生日を気にかけるなどそれまでなかったことだ。また、ある時、ウディがスンニの素脚をきれいだと褒めてからは、スンニは冬でも家の中でタイツをはかなくなった。ミアが「寒いんじゃないの?」と言っても、知らん顔だった。