顔を引き寄せ、キスをした
高校を卒業し、ニュージャージー州のドリュー大学に進学してからも、スンニは週末になるとマンハッタンに戻り、ニックスのシーズンが始まれば、ウディと一緒に試合を見に行った。学校のある平日も、ウディは頻繁にスンニに電話をかけた。スンニは学校に馴染めず、孤独を感じていたのだが、そんな話はもちろんミアにはしていない。相談相手は、ウディだけだったのだ。そんな中で、スンニとウディの関係は、大人の男女のそれへと発展する。マンハッタンに戻ってきていたある土曜日、スンニは、仕事が休みのウディを訪ねた。自分と付き合う若い女性にいつもそうするように、ウディは自分が敬愛するイングマール・ベルイマンの映画を勧め、ウディの試写室で「第7の封印」を見ることになった。アメリカ育ちの女子大生にとって、時代物の外国語映画が心から面白いと思えるものだったかどうかはわからないが、スンニは真剣に見て、映画が終わった後も、ウディが細かな解説をするのを黙って聞いていた。そんなスンニがあまりにも健けな気げで、ウディはつい、顔を引き寄せ、キスをした。するとスンニは、「いつになったら行動に起こしてくれるのかと思っていたのよ」と言ったのだ。スンニの思わぬ反応に、ウディは、「行動に起こすだって? 待ってくれ。私はまだ一応、君のお母さんと付き合っているんだよ。私たちは今どんなところに入り込もうとしているのか」と動揺したが、走り出したら、もう止まらなかった。
だが、その頃の2人は、これが永遠の愛に繋がるとは思ってもいなかった。スンニはそのうち大学で同年代の男の子と出会い、普通の恋愛をするのだとウディは言い、スンニも漠然とそう思っていたのだ。秘密の火遊びであるだけに、その情事は、2人にとって、刺激的で新鮮だった。だからこそ、ある日、いつものようにウディのベッドに横になっていた時、ポラロイドカメラにふと目が留まると、危険な思いつきが浮かんだのである。