―そうなんですね。ベテランから出張ホストの心得みたいなものがありましたら、教えてもらえますか?
「大原則はさっき言った、ホストは女性の体を濡らすのではなく、心を濡らすものだと」
―心を濡らす。難しいですよね。
「難しいですよ。形がないし、ノウハウがないじゃないですか。恋愛マニュアルがないのと一緒で、それぞれみんな違うので」
ゲスなものじゃないと僕は思っていても、周りはゲスに見ている
終始にこやかに落ちついて話していた彼だが、苛立ちを隠しきれなくなったのはこのあたりからだ。
―ちなみにお友達は仕事のことを知っていますか。
「知らないですね。言ったとしたら、結局は何人とやったとか、そういう話になっていくような気がするので。そんなゲスなものじゃないと僕は思っていても、周りはゲスに見ている。それに出張ホスト自体が偏見を持たれているから、40を過ぎてのホストなんて多分ばかにされますよね。いい年してそんな仕事をやっているのかとか、そういうふうに見られると思うので。誇りをもっているので気にはなりませんけど」
―男性客って風俗嬢に対して見下すような発言がたまにあるんです。男性から見てその理由はなんだと思いますか? どうして言いたくなるのでしょう。
「僕自身は見下していません。風俗嬢も、お客さんである男性たちの悩みなどを聞いているので、どれだけ大変な仕事なのかはわかっているつもりです。逆にそんなことを言う男をぶん殴ってやりたいぐらいです。股開きゃあ、金になるだろうぐらいの感じでいるんでしょうね。基本的に男って男尊女卑というか、女性をばかにした部分があるじゃないですか。日本古来からずっと」
―それはなくならないのでしょうか。
「なくならないですね。多くはないでしょうけど、一部の男には、基本的に金でなんでも解決できると思っている方はいるでしょうから」