文春オンライン

「ゲスなものじゃないと思っていても、周りはゲスに見ている」40歳超の“出張ホスト”が語る仕事への“偏見”

『男娼』より #1

2021/05/26

お金は欲しいけど、ひとりひとりを大切にしたい

―人の悩みを聞いたりするのはもともと性格に合っていたということですが、世にこれをぜひ伝えたいということはありますか? もっと男性は奥さんの話を聞いてあげようとか、そういった感じのこと。

「それはありますよ。でも矛盾していて、旦那さんが奥さんに優しくしすぎると僕という必要性がなくなっちゃうので (笑)。とはいえ、僕が何か言ったところでそういう旦那さんは何も変わらないでしょうけど。だから言わせてもらえば、主婦の大変さをわかってもらいたい。さきほども言いましたけど、日本は男尊女卑の国なので、男性が女性を理解しようと努めなければならないと思います」

 気になる彼の収入だが、「多くて80万前後、少ないときで30万前後」だという。1カ月のうち稼働日は20日前後と決めている。

ADVERTISEMENT

「1カ月毎日アポイントがあると、絶対にいろいろと対応が雑になって、こなす感じになってしまう。月収が80万超えのときは雑になっていると思います。それだと駄目なんです。お金は欲しいけど、ひとりひとりを大事にしたい」

写真はイメージです ©iStock.com

―これだけやっているのに全然割に合わない、と思うときはない?

「お金以上のものがあるんです。その人から、『ありがとう、救われました』と言われれば、すごくうれしいです。お金だけではないやりがいがあります。基本、生活ができればいいので、それ以上は望みません(笑)」

―今後も出張ホストを続けていかれるご予定ですか?

「そうですね。ある程度リピートしてくださるお客さんがいますので、その人たちを裏切りたくない。どんどん年は取っていくけれど、お客さんと同じように年を重ねていければと思っています」

 出張ホストに求められるのは、真剣に耳を傾ける「聞く力」。その力に長けた一流の者たちだけが生き残れる厳しい世界。今日も出張ホストたちは、女性たちのSOSを全身で受け止めている。

【続きを読む】「なぜか公務員ばっかり来るんです」カリスマニューハーフ嬢が明かす“業界の意外な特徴”とは

男娼

中塩 智恵子

光文社

2018年6月30日 発売

「ゲスなものじゃないと思っていても、周りはゲスに見ている」40歳超の“出張ホスト”が語る仕事への“偏見”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー