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22時以降真っ暗な街、電気が点かない寮…アジアの日本人キャバクラを放浪した“底辺キャバ嬢”が明かす“ヤバい”店

『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』より #2

2021/05/24
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 店にはベトナム人のキャストも5人ほどいる。彼女たちは皆、学校の授業で日本語を専攻していたらしく、日本語ペラペラ。ガールズバーなのでカウンターで接客するわけだが、さすがに10人も並ぶと狭い。

リゾート風の内装のガールズバー。制服は店のロゴが入ったTシャツとショートパンツ

「一杯いただいてもいいですか?」

「私も」

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「私も」

 少し前まで苦手だったこのノリも、今ではついアツくなってしまう。レディースドリンクは1杯16万ドン(=ベトナムドン、約800円)、バックは4万ドン(約200円)だ。しかも、客のボトルから飲んでもバックがもらえる。今まではカクテルやリキュール系の酒が苦手であまり飲まなかったのだが、なんとベトナムには焼酎があるのだ。種類も米、芋、麦とあり、なかでも私のお気に入りは麦焼酎のウーロン割り。少しアルコール臭がキツいが、飲みやすく美味い。ドリンクを飲むときは自分で杯数を付けるのだが、他の子がどんどん飲んでいくのを見ていると、なぜか負けてられんという気持ちになってくる。これもガールズバーだからだろうか。とりあえず、毎日の目標はキャストのなかでいちばん多く飲むこと! さて、どうなることやら……。

©iStock.com

ハノイのこじらせ男子たち

 ベトナム人の平均年齢は2018年現在で31歳。これは、1975年に終戦したベトナム戦争でほとんどのベトナム人が戦死したからだと言われている。それゆえか、ハノイに来る日本人駐在員は20~30代前半の若い人が多く、そのほとんどが独身だった。

「俺もハノイ来る前に彼女と別れてなかっタラ、今頃、結婚してたのにな~」

「転職してなけレバ、ハノイに来ることもなかったのに……」

 まるで某ドラマのように「タラレバ」を言う男子(客)たち。

 ホーチミンと違い、夜22時過ぎると真っ暗になるハノイ。日系居酒屋が多いこの周りでも、深夜まで営業しているのはガールズバーのみ。ここで毎晩、男子会を広げるのがハノイのタラレバ男子たちの日常らしい。

「やっぱり、ハノイって出会いがナイよね。日本人の女の子もいないし」

「俺、最近ボルタリングはじめたの。習い事イイよ~」

 日本の独女会がカワイく見えるほど、会話がおぞましい。彼らの状況が悲惨なのはよくわかる。もし、自分が駐在員だとしたらハノイだけは絶対に行きたくない。ホーチミンならまだしも、ハノイは欧米企業の進出が極めて少ない。2017年12月に、やっとマクドナルドの1号店がオープンしたくらいだ。それ以外に飲みにも行ける店も、夜遊びできるような店も少ない。まぁ、お陰でガールズバーが繁盛しているわけだが……。駐在員たちも皆、「インドとハノイに赴任が決まったら地獄」と口を揃える。

停電になった寮。原因はなんとオーナーの料金の支払い忘れ。スマホの充電もできず、暑い中、女の子同士で酒を飲み、タバコを吸って過ごした

「マイちゃんカワイイよね」

「俺はミンちゃんかな~」