文春オンライン

22時以降真っ暗な街、電気が点かない寮…アジアの日本人キャバクラを放浪した“底辺キャバ嬢”が明かす“ヤバい”店

『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』より #2

2021/05/24
note

 さて、どうしたもんか。女ばかりの職場ではよくあること。苦手な人、コワイ人、キツい人も出てくる。女同士の問題の場合、正面からぶつかっても揉めるだけ。秘策は「貸しを作ること」だ。

「明日、4人でキノコ鍋行かない?」

 ふたり組の客に付いていた私とユイちゃん。ユイちゃんとクミちゃんは友だち同士で同じ寮に住んでいる。ユイちゃんに対しては特に苦手意識はなかった。

ADVERTISEMENT

「鍋、行こうよ~! わーい、同伴!!」

 ハノイでは10年ほど前にキノコ鍋がブームになり、今も日本人駐在員の間で美味いと評判だそうだ。鶏ガラや薬膳のスープにキノコをたっぷり入れ、豚肉や牛肉をしゃぶしゃぶして食べるという。

相手に優しくすると相手も私にやさしくなる

 そして翌日。

「うぅ……胃がイタイ……」

 毎晩の飲み過ぎが祟ったのか、翌朝胃の痛みで目が覚めた。日本から持参した胃薬を飲んだが、まったく効果なし。キリキリと込み上げる痛みを抑え、欠勤の連絡を入れる。ついでにユイちゃんにも連絡をすることにした。

「ユイちゃん、ごめん。今日、胃痛で出勤できなそうだから鍋キャンセルするわ……。代わりにクミちゃんと行ってきて~」

『貸しを作る』=『同伴を譲る』。

 しばらくして、知らないアカウントからLINEが来た。クミちゃんだった。

「アユミちゃん、胃痛大丈夫? 同伴、私が代わりに行ってもいいの?」

「全然、大丈夫だよ~! 今日は店休むわ……」

「ありがとう! アユミちゃん、お大事にね」

 この日以来、クミちゃんは私に優しくなった。苦手な同性の克服法、それは相手に優しくすること。

 ちなみに胃痛は薬局で買った胃薬を飲んだら2日ほどで治った。翌週、違う客とキノコ鍋同伴にリベンジ。はじめて食べたキノコ鍋は絶品だった。特にスープが美味く、例えるならとんこつラーメンやフカヒレスープのような濃厚さ。そこにキノコの渋みと肉の油とコクが染みわたり、何杯でも食べられる。このスープ、水筒に入れて持って帰りたいわ……。

店近くの食堂のフォー。上に乗っている豚の血を固めたレバーは、食べると肝炎になる、と駐在員の間で噂に

「絶対、味の素入れまくりだよね」

 おい、感動を返せ。