大阪の医療体制は少なくとも現場レベルで見れば、「医療崩壊」である。5月半ばを過ぎてようやく感染者数が減少に向かってきたが、重症病床の使用率も100%を超える時期もあったことは紛れもない事実だ。

 自宅“療養”者も急増した。感染者数が増えて、入院が満足にできない状況が問題であることは間違いない。だが、ここまで増えてしまえば自宅で療養するのではなく、治療が必要な患者が増えていることを意味する。

コロナ対策では後手に回った吉村府政

「本当なら治療が必要な患者が自宅にいる。満足にトイレにも行けない危険な状況」「一家4人が感染し、入院できたのは1人だけ。感染した妊婦が感染した高齢者のケアをしている」

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 医療従事者を取材すれば、こんな惨状をいくらでも聞くことができる。大事なのは、自宅にいる人々も医療システムの中に組み込み、たとえば訪問診療の活用やホテルの位置付けを見直すという施策も取れたはずだが、吉村洋文府政は後手に回った。

吉村知事

 ここで注意が必要なのは、それでもなお依然として吉村府政を変えること、すなわち大阪で維新から政権を奪うことは容易ではないということだ。詳しくは「文藝春秋」6月号「大阪コロナ感染爆発でも…吉村洋文・府知事はなぜ失墜しないのか」に書いたが、こうした見解は吉村、そして維新に反対する人々からすれば納得し難いだろう。

昨年末の世論調査では圧倒的評価

 3度目の緊急事態宣言を反対派はこう批判した。

「2月の時点で2度目の緊急事態宣言解除に動いたことが、いまの感染者増加につながったのではないか」

「変異株が流行する兆しが見えた3月下旬、厳しい措置をとれば、こうはならなかった」

 それ以外にも失敗はある。代表的なのは昨年8月、会見の中で唐突に、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、イソジンをはじめとするポビドンヨードを含むうがい薬を推奨したことだ。ところが医学的根拠が薄弱だと多くの批判にさらされた。

 それでも2020年12月末、朝日新聞の郵送による世論調査の結果によれば、依然として新型コロナ対応で評価の高い政治家として名が挙げられた。それも2位につけた東京都知事・小池百合子を圧倒的に引き離して、である。4月に入り連日、全国最多の新規感染者数が出て、緊急事態宣言に追い込まれた現時点では、昨年末ほど評価は得られないという反論もあるだろう。