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園の実情に数々の疑問

 中でも12月7日発売の1月号(「元利用者家族が語ったやまゆり園と殺傷事件」)では、先の智子さん同様、園を退所した平野和己さんの両親(泰史さん・由香美さん)と吉田壱成さんの母親(美香さん)による生々しい話を報じた。

 例えば、当時のやまゆり園は、いくつかの居室が集まる「ホーム」と呼ばれる8つのユニットに分かれていたが、そのうち1つが「非常にオシッコ臭かった」という平野泰史さんの話に続き、妻の由香美さんが「オシッコ臭いのは、息子が事件のあと4カ月いた『みのりホーム』も同じでした。でも保護者はホームの中に入れてもらえないので、詳しい事情はわからないんです」と語っている。

 吉田美香さんも「毎日風呂にも入れてもらってるはずなのにフケもすごいし、臭いもすごい。(略)うちの子はうんちをした時、自分で拭けないんですが、『出たよ』と必ず言うんですよ。でもやまゆり園にいた時は、パンツにべったりうんちがついている。だから職員の目があまり行き届いていないんだなと思いました」

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©iStock.com

 他にも「部屋が施錠されていたのではないか」「掲げたプログラムが実際には実行されていないのではないか」など園の実情に数々の疑問を提示している。これらについては昨年、やまゆり園の入倉かおる園長に取材を申し込んだが、いまだ回答を得られていない。

 しかし私自身は、単にやまゆり園をバッシングして終わりということでは、問題の本質には迫れないと感じている。これまで私は取材で施設についての惨状を数多く耳にしてきた。

 施設には当然、限界があり、それを自明とした上で、施設の構造的問題をどう解決すべきかを問わなくてはならない。

 それは単に知的障害のみならず、いつかは必ず介護を必要とする私たちにとって普遍的なテーマだからだ。この裁判をきっかけにそうした問題提起を行っていくつもりだ。

自傷防止用の手袋をはめられた植松

 そして、1月10日に行われた第2回公判――。

 植松は果たして法廷に姿を現すのだろうか。私が開廷前から傍聴席で固唾をのんで待ち構えていると、やがて6人の係官に取り囲まれ、両手に自傷防止用のミトンの抑制手袋をはめられた植松が入廷してきた。

「二度と秩序を乱す行為をしないように。よろしいですね」

 裁判長の言葉に神妙そうに頭を下げる植松。

 3月16日に判決が予定されるこの裁判では、今後も責任能力の有無や程度が最大の争点となるだろう。しかし、植松には逃げずに自らの犯した罪や過去の言動に向き合ってほしい。そうでなくては、亡くなった19人が浮かばれない。

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