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「ハルシオン1000円。デパスが…」深夜1時に開店する大阪・西成「泥棒市」の露天商を直撃

「西成で生きる この街に生きる14人の素顔」#3

2021/05/29
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「泥棒市」が儲かる仕組みとは?

――西成の表側ではなく仕組みとか裏側を聞きたいんです。1日に客はどれくらい来るんですか?

「ピンキリです。ほかのとこわかりませんけど、平日の売り上げが1万数千円くらい。あそこは土日祝日がメインですから土日なら1日平均7万円くらい」

 平日の泥棒市は夜中の1時ごろから警察が巡回しはじめる7時ごろまでなのだが、それが土日になると一変する。

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 昔のように南海電鉄の高架下まで露店が並んでいる状態になるのだ。

 また、一目で観光客が多いとわかるのも特徴だ。

 しかし、怪しいクスリや裏DVDを売る店は、土日であっても明るい時間になるともう撤退している。

休日の泥棒市には、多くの人が集まる ©️花田庚彦

――じゃあ、おいしいですね。元値ワンシート数百円ですもんね。

「ハルシオンなんか元値平均400~500円。マイスリーの買い取りが1000円から。いま売られている値段が、ワンシート2500円。ハルシオンの売値は1000円。サイレースが1500円。デパスが1800円くらいですね。

 この街というのはクスリだけじゃないんで。海賊版もあるんで。DVDが多いね。クスリよりDVDとかパチモンのブランド品とかね」

――動画はネットからダウンロードですか?

「いやちがうんです。みんな大阪にある日本橋の雑居ビルで買ってきて。それをコピー。本当は通報しなきゃいけないんですが、これが無くならないです」

――みんな勘違いしているんですが、基本的に通報義務って無いんですよ。児童の虐待など以外は、見て見ぬ振りでいいんです。私人逮捕というのはありますけど。

©️花田庚彦

「俺は関係ないから、って言っています。DVDは1枚200円で売られていますね。この前パクられた人は罰金50万きたみたいです。それでも無くならない。

 僕の出身は九州なんです。西成は日本を回ってやろうという思いの中での中継地点です。

 泥棒市の露天商はね、“オレは命賭けてやっとるから”とみんな言っています。露天商はね、いうたら俺が知っている限りはみんな生活保護なんですよ。9割は生活保護、不正受給者ですよ、ハッキリ言って。

 収入あげたら申告しますよね、しませんから。大阪ではみんな生活保護。ボートして酒のんでパチンコ、みんなそれだけしても金が欲しい。だからやる。だから生活保護、だから病院でタダで仕入れてくる。それを売るわけですよ。僕は違いますよ、精神障がい者の年金受給者なんで。ほんとはアカン」

 法規制では生活保護の受給者の収入認定は月間1万5000円まで認められている。それ以上の収入は生活扶助費から収入として引かれる形になるが、当然収入があった場合は申告をしなくてはならない。

西成で生きる~この街に生きる14人の素顔

花田 庚彦

彩図社

2021年3月27日 発売

「ハルシオン1000円。デパスが…」深夜1時に開店する大阪・西成「泥棒市」の露天商を直撃

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