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2021/05/31

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

違反の取締りを見越した駐車場建設事業

「もともとこの会社を設立したのは、野中事務所の加藤さんからの話でした。野中先生自身、京都にあった『日本プレハブ駐車場工業会』という社団法人の顧問をしていた関係から、駐車場問題には詳しい。ちょうどこのころ、道路交通法の改正があり、駐車違反の取締りが厳しくなってくるという話でした。で、これからは駐車場をつくれば儲かる、と誘いがあったのです」

 プレハブ駐車場は、街なかで見かける2階建ての簡易駐車システムだ。駐車違反の取り締まりのおかげで、駐車場需要が急増する。風が吹けば桶屋がもうかる方式の計画である。駐車場建設業者「トーヨーアルテ」の元役員が明かす。

「加藤さんは当時、水谷建設の嘱託社員の肩書きをもっていたほど、水谷建設と近かった。加藤さんは秘書でありながら、会社から給与が出ていました。水谷建設の営業マンのような役割をしていた。そんな関係ですから、加藤さんから水谷会長に新規事業の話が持ち込まれるのは、自然の流れでした。資本金2100万円のうち、こちらが出したのは100万円だけ。あとは水谷会長と野中事務所で1000万円ずつ負担しています。たしかに加藤さんが現金で1000万円を持ってきました。その出どころについては不明ですが」

 この会社には、野中広務の京都事務所長や加藤夫人まで役員に就任する。他の役員は、加藤の大学の先輩や後輩といったメンバーで、まるで野中事務所と水谷建設の合弁会社のような様相を呈していた。しかし、結果的にこのプレハブ駐車場事業は失敗する。トーヨーアルテの元役員がこう言う。

「しょせん駐車場に関しては、素人集団ですからね。社員が6人いて、人件費だけでも大変でした。1年足らずであっという間に資本金を食いつぶしてしまった。それで、3000万円を補填しましたが、結局うまくいかず、会社を解散することになったのです」

 本来、会社の解散となれば、資本金の出資者である野中事務所の投資もパーになる。だが、驚いたことに、水谷側が野中事務所の資本金を穴埋めしたという。元役員が続ける。