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「風俗とか水商売にはすごく偏見があった」それでも…女子大生の私がソープで働く道を選んだワケ

『女子大生風俗嬢 性とコロナ貧困の告白』より #1

2021/06/04
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“本強”地獄だった錦糸町のデリヘル

 池袋を歩いているとき、スカウトマンに声をかけられた。風俗と水商売のスカウトというので立ち止まって、話を聞くことにした。スカウトマンは麻衣さんの事情を聞きながら、風俗の仕事の説明をしてくれた。デリヘル、店舗型ヘルス、ソープランドがあることを聞いて、それぞれ何をするのか教えてくれた。

「2時間くらいルノアールで話を聞いて、やるしかないって思いました。エッチなことは抵抗あるといえばあるけど、そんなことを言ってられる状況じゃなかった。それしか手段がないし、大学は絶対に卒業したいのでやろうと」

 スカウトマンはその場でデリヘルに電話して、外見と年齢は間違いないと口頭で店舗に伝えていた。スカウトマンが麻衣さんの写メを撮って店に送ると、速攻で採用が決まった。錦糸町にある大衆デリヘルだった。

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「最初は大衆店でした。講習はなくて、口頭で本番はしない性行為を説明されただけ。不安だったけど、覚悟してやるしかなくて、なんとかなりました。バックは60分1万円か9000円で、プラス送迎費で2000円取られたり、みたいな感じ。安かったです。プラスアルファで本番やってもいいよ、って裏引きが当たり前の店で、私はそんな知識はないから普通にやってるみたいな。新人で業界未経験、しかも未成年だったから“本強”がすごくて、最初はそれに苦しみました」

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 これまで何度も出てきている“本強”とは、本番強要のこと。警察に届けを出して営業するデリヘル(無店舗型ヘルス)は、違法である本番サービスはしない。そこで、男性客は女の子たちに直接、本番サービスを求める。女の子たちはルール違反と断るか、プラスアルファでお金をもらうか、言われたまま本番をするかの選択になる。

 デリヘルはラブホテルで男性客と2人きりとなる。店員が近くにいる店舗型と違い、ストッパーになる存在がない。女性や子どもに強く出る性格の男性客は多く、本強はおそらくすべてのデリヘル嬢が経験している。

「やってもいいと思ってる人がたくさん。挿入してもいいって。無理やり押し倒されることも頻繁で、男の人の力に抵抗できない。何度も無理矢理やられそうになって。泣いたこともあったけど、お仕事だからと思って。最初の頃は言葉でうまくかわすことができなかった。やってくるのは、だいたい中年男性です。未経験だから何やってもいいと思ってる人がけっこういて、押さえつけられて、お前に拒否権ねーからって。精神的に疲れてしまって、一度休んでいるんです」