悪いサイクルに入ったら、なかなか脱出できない。

 危機的状況からいかに抜け出せるかは、リーダーの手腕が問われるところである。柏レイソルを指揮する45歳の下平隆宏監督は「負のスパイラル」を2度、乗り越えてきたリーダーである。

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 昨季、ミルトン・メンデス監督がわずか開幕3戦(1分け2敗)でチームを去り、ヘッドコーチから緊急昇格した青年指揮官はチームを建て直し、その後5連勝を飾るなどチームを浮上させた。今季も開幕から1勝3敗と“スタートダッシュ”に失敗したものの、一時は8連勝を挙げて首位に立っている。現在、3位をキープ。首位鹿島アントラーズに勝ち点11差と離されてしまったが、最後まで逆転優勝をあきらめるつもりはない。

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 危機に立たされたとき、リーダーはどう振る舞おうとしてきたのか――。

◆ ◆ ◆

――今季、開幕のサガン鳥栖戦で3-1と勝利しながら、次戦から3連敗を喫しました。順位も18チーム中15位。このときはどんな心境でした?

「プロのサッカーは勝負の世界。監督という仕事をやっている以上、3連敗したら(首が)危なくなると覚悟していました。自分のなかで危機感がかなりありました。次も負けたらマズイな、と。結果が出ないと責任を取らなければならない立場ですから」

――危機感を持つなかで、どうチームを変えていこうと?

「いや逆に、変える必要性はなかったですね」

――と言いますと?

「組織が崩れるときのイメージというのは、たとえばチーム内部に何か問題があったり、何か軋轢があったり、空気が悪いことでガタガタになっていくケースがあると思っています。でもレイソルにそういうところはなかったし、ただあと一歩結果が出ていない状況でした。ならば昨年から積み上げてきたものを信じて着実にやっていくしかない。サッカーを変える、システムを変える、メンバーを大幅に変えるなどとは考えなかったですね」