「瑠美さんの遺体には全身に木刀や杖のようなもので殴られたり突かれたりしたことを示す外傷があり、対面した遺族も瑠美さんとはわからないほど変わり果てた姿だったようです」(地元社会部記者)
しかし加害者らには反省の色は見られない。法廷で岸被告は「暴行は山本被告がやっていた。暴力団とのつながりがあると思っていたため、(山本被告が恐くて)止められなかった」と主張。山本被告は「暴行は岸被告。止めようとしたが怖かった」、自分は怪我の手当をしていたなどと訴え、「主犯」をそれぞれに押し付け合う事態となった。
裁判長は「尊厳を踏みにじられた末に生命を奪われた」
2月19日の最終意見陳述では、山本被告はすすり泣きながら「正直、謝ることしかできない。岸被告を止められなかった。私じゃ止められなかったんです」と懺悔してみせたこともあった。これに対して岸被告は「山本さんには面倒くさい演技はやめてほしい、と言いたい」と苛立ちをあらわにした。交際関係にあった2人だが、初公判以降、最後まで寄り添うことはなかった。
3月の判決で岡崎忠之裁判長は次のように断罪し、山本被告に懲役22年、岸被告に懲役15年を言い渡した。
「日常的、継続的にバタフライナイフを落として刺す、木刀で臀部などを殴打するなどの激しい暴行を繰り返し、瑠美さんが衰弱していく中でなおも暴行を加えて死に至らしめた」
「(瑠美さんは)家族から引き離されて孤立させられ、衣服や入浴の機会も満足に与えられないなど劣悪な環境の中で監禁された。高カロリーの食事を強制されて無理やりに太らせるといった不本意な行動を強いられ、人としての尊厳を踏みにじられた末に生命を奪われており、この間に感じた苦痛や無念さは計り知れない」
一方で死体遺棄については、「田中被告が遺体を埋めることを提案したが、それを山本被告が拒否し自ら通報した」として、遺体を隠したのではなく「口裏合わせをするための時間稼ぎ」だったと認定した。
自分だけが助かろうとして、罪をなすりつけ合う両被告。死体遺棄についても有罪としたい検察の思惑も絡まり、今後開かれる福岡高裁での控訴審初公判が注目される。