文春オンライン

月収300万円もあった時代からスーパーで残飯を拾って食べる生活に…沖縄の“売春街”で働いた女性の“哀しすぎる証言”とは

『沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち』より #1

2021/06/15
note

離婚、暴力、借金、ホームレス……底のない転落物語

 そうこうするうちにリエさんは22歳で沖縄の男性と結婚し、子どもも生まれたが、働こうとしない夫に愛想をつかして1年たらずで離婚した。間を置かずにリエさんは2度目の結婚をしたが、2番目の夫も生活を始めたとたん酒びたりの生活となり、仕事をさがそうともしなかったという。つくづく男運がないとリエさんはため息をついた。離婚が重なったことがきっかけになり、自分に課していた禁を破ることになる。

「幸せになりたかったのに……夫は酒乱で酒を飲むと暴れてビール瓶を投げたりして、子どもにもあたりそうになって、しょっちゅう大喧嘩をしてました。だから、私が稼ぐしかなかったし、夫の暴力から逃げるようにして、その頃から売春をするようになったんです。おカネの魅力もありました。当時はバブル全盛期だったから、おカネを持ったお客さんがたくさんいて、1ヵ月に200万~300万稼いでました。

 でも、友達の保証人になって、その子が逃げてしまったので、1000万の借金を背負いました。闇金からの借金でした。それで闇金の連中に真栄原新町や吉原で働かされて、借金を返し続けたんです。真栄原新町では自分でウリもしながら、せっかくだから店の経営もやってみようと、店舗を借りて経営も始めました。店に置いてあった2人がけ用のソファで寝て、店に泊まりこんで必死で働いた。1日に客を何十本もとったよ。そのときに客から言われた言葉でブチきれたことがあります。『三流売春婦が、三流金融からカネ借りてこのありさまか』と侮辱されたんです」

ADVERTISEMENT

 それからリエさんは借金を背負ったまま八重山の石垣島へと渡り、特飲街で住み込みで働いた。石垣島にはおよそ10年いたが、その間も本島のヤクザが石垣島のヤクザに連絡したらしく、借金取りが現れたという。ついに彼女は自己破産の手続きをした。

「石垣島で知り合って結婚した3度目の男が、じつはヤクザだったさ。それでその島で飲み屋を経営したんだ。那覇にいっしょに戻ってきて、また飲み屋をやったんだけど、夫がヤクザなので、他のヤクザが真っ黒のクルマで乗りつけて飲みに来る。一般の客が寄りつかなくなって、銀行からの借金も返せなくなりました。その上、夫にはオンナができて、私は奥武山公園でホームレス生活をしなければならなくなった。スーパーで残飯を拾っては食べて、滑り台の下などのなるべく明るいところで寝てました」