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《幕開けからラストシーンまで》『ボヘミアン・ラプソディ』の登場曲徹底解説! クイーン不朽の名曲と日本との関係とは

2021/06/04

ウィ・ウィル・ロック・ユー We Will Rock You

 映画の中盤、連日の奔放な生活の疲れでレコーディングに遅刻するフレディ。彼不在のスタジオで、ギタリストのブライアン・メイを中心にメンバーが、踏み足とクラッピングだけで曲を作っているシーンが描かれている。名曲「ウィ・ウィル・ロック・ユー」誕生の瞬間だ。

 この曲は「伝説のチャンピオン」との両A面シングルとして1977年10月にリリースされている。きっかけは、1977年春、英・スタッフォードでのコンサート会場でのこと。アンコールを待つ観客が、手拍子を交えながらサッカーの応援曲を大合唱しているのを見て、ブライアンは閃く。「オーディエンスみんなが演奏に参加して、共に歌える曲を作ろう」と。

「ROCK」には文字通りの“ロック”に加え「揺さぶる」という意味もある。「We Will Rock You=俺たちがみんなを揺さぶるぜ!」に込められたメッセージはブライアンの描いていた通り、オーディエンスがひとつになってコンサート会場を大いに揺らした。それだけに留まらず、この曲はアスリートを応援する曲として世界中のスタジアムでも鳴り響くようになり、今では誰もが知っているロックのスタンダード・ナンバーになった。

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6thアルバム「世界に捧ぐ(1977年10月発表)」に収録

地獄へ道づれ Another One Bites The Dust

 映画でロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)が『ドラム・ループ(生ドラムでなく電子楽器)にシンセサイザー? そんなのクイーンじゃない!』と言っていたように、およそクイーンっぽくないブラック・コンテンポラリー・テイストあふれる楽曲。それが、2度目の全米チャート1位を獲得したクイーン異色のR&B曲「地獄へ道づれ」だ。クイーンといえばギターやコーラスをオーバー・ダビング録音した重厚なロック・ サウンドが特徴だが、バンドに最後に加入し、クイーンらしさに拘らないベーシストのジョン・ディーコンならでは の作品である。

 当時のクイーンはアメリカのヒットチャートで1位を取ることを最大の目標としており、この曲は、クイーンのLA公演での楽屋で、マイケル・ジャクソンからシングル・カットすべき!という勧めもあって発売したもの。マイケルの睨んだ通り、結果、見事に全米チャート1位を制した。アメリカの市場規模はとてつもなく大きく、クイーンが世界の頂点に立った記念すべき曲だ 。

8thアルバム「ザ・ゲーム(1980年6月発表)」に収録