東京地裁の下した「政治とカネ」を巡る判断
「裏献金は、起訴内容である土地取引を記載しなかった政治資金収支報告書の虚偽と関係ないので、公判での審理は無用」
公判前整理手続きにおける小沢弁護団の主張に対し、検察が譲らない。
「1億円の現金授受は、収支報告書に嘘を書いた大きな動機だ」
そう位置付け、真っ向から衝突してきた。
そして激しい攻防の末、東京地裁が判断を下す。公判前整理手続きのなか、検察側の意向に沿い、公判で水谷建設による裏献金を審理することになるのである。いきおい公判における最大の関心が、水谷建設による小沢事務所への裏献金問題となる。関与したのは元秘書3人のうち、裏金を受け取ったとされる元事務担当秘書の石川知裕と金庫番の大久保隆規の2人だ。水谷建設の社長だった川村尚が、その石川と大久保に5000万円ずつ、しめて1億円を渡したとされる。
水谷マネーの審理が決定されたのが、10年12月。初公判の期日は、11年2月7日に決まった。09年秋の水谷功による獄中告白から、すでに1年半近くが経過している。こうしてついに、小沢一郎の政治とカネ問題が、最大にして最後のヤマを迎えるのである。
「俺が進んで証人に出たい、なんて言うわけないやないか」
そして激しい動きのなか、裏献金問題の火付け役、水谷建設元会長の水谷功が改めてときの人となる。当人の意志とは関係なく、周囲が騒々しくなっていった。
「そりゃあアンタ、向こうから接触してきたに決まっとるやないか。俺が進んで証人に出たい、なんて言うわけないやないか。ただし、もともとあの人は、俺も知っとんのや。それで(頼まれた)……」
初公判をひかえた2月の初め、当の水谷功本人に尋ねると、こう打ち明けた。「あの人」とは、小沢一郎の第一秘書だった大久保隆規の主任弁護人、権藤世寧のことを指す。最後の第16回公判前整理手続きがおこなわれた2月3日、小沢側の弁護団は水谷功を証人として法廷に呼ぶべく、東京地裁に申請し、それが認められる。よりによって、小沢事務所への裏献金を告白した張本人が、元秘書たちの公判で小沢側の証人として出廷するという。もとより水谷自身も了解済みだ。一体全体どうなっているのか、その舞台裏を探ってみた。