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追いつめられた小沢一郎秘書軍団

 薄汚いカネは一切受け取っていない─。

 そう弁明してきた小沢一郎は、水谷建設による裏献金が立証されれば、政治生命を失いかねない。これまでにない大ピンチに陥っていた。そこから追い詰められた小沢の秘書弁護団による水谷建設元会長へのアプローチが始まる。裏金工作に携わってきた水谷功の側近が明かす。

「まさに裏献金の審理が決まった12月の下旬でした。水谷会長本人が言うには、小沢側の弁護団の権藤先生とあるパーティでたまたま会ったらしい。そこで、証人出廷を頼まれたといいます。もともと権藤先生は、糸山英太郎さんの弁護士でした。その縁で水谷会長とも知り合いだったんです」

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 無類のギャンブル好きである水谷にとって、糸山はカジノ仲間だ。その関係もあり、福島県知事の汚職事件に発展した原発事業にかかわる一件で水谷建設グループが家宅捜索を受けたときに頼ろうとしたのが権藤弁護士だったという。権藤との関係について、水谷本人も言葉少なく次のように解説した。

「あの(権藤)先生は、事件の処理で弁護をお願いしたこともあるでな。あのときは断られたけど、知り合いなのは間違いないでな。それで今度会うてから、電話がかかってくるようになったで、そういう話になったんや」

 10年末にパーティでたまたま会い、証人出廷を頼まれたというのは、あくまで表向きの話だろう。裁判所が水谷マネーの審理を認め、小沢サイドが慌てふためいた時期だ。偶然を装ったか、八方手を尽くして水谷功に接近した、そう見るのが自然ではないか。

 そもそも水谷マネーに関する小沢サイドの法廷戦略は、極めて限られている。大久保や石川の秘書時代、現金が合わせて4度も水谷建設から小沢サイドに渡ったと明かされてきた。具体的にいえば、仙台空港ロビーでのやり取りからはじまり、全日空ホテルで2度、最後が盛岡での2000万円の受け渡しである。受け取ったのは元第一秘書の大久保が3度、石川は1度きりだ。

 その4度のなかでも、大久保とのやり取りには、第三者が現金の受け渡し現場に立ち会っていた。水谷建設の下請け業者、日本発破技研社長の山本潤である。むろん検察側も、山本を取調べ済みであり、供述調書にも現金の受け渡し現場の様子が生々しく記されているはずだ。また、発破技研側の出張スケジュールや山本自身のシステム手帳など、物的証拠も少なくない。小沢側はいかにも分が悪い。大久保に対する裏金提供という検察側の主張を覆すのは、かなり厄介といえた。