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 店の金を奪い、店の人間2人をホテルに監禁し、気がつけば主犯が風呂場で2人を殺していた。結局シャブの利権でトラブルになっていたと、彼は後から知ったのだと言う。

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「それ、殺すの止められなかったんですか」

「一瞬やったし、めちゃくちゃ怖かったんすよ。止められるような状況じゃなかったです」

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「2人も殺してるのに、ホテルの人とか周りの人も気づかなかったんですか」

「人が死ぬ時って、静かなんすよ。叫んだりしない。チェーンソーの音だけ鳴り響いてました。それも一瞬です」

 彼は、2人ぐらいなら軽く殴り殺してしまいそうな貫禄があるが、実際の殺人の現場では怖くて、その行為を止めることさえできなかったのだろう。バラバラになった2人分の死体を袋に詰め込み、海や山に投げ捨てた。強盗致死、死体遺棄、逮捕・監禁の罪で、ここに放り込まれた。裁判までの1年以上を、面会以外誰とも話をすることなく、ここで過ごしてきたという。

空を眺める初老の男性は…「あのおっさん、たぶん死刑囚ですよ」

「あのおっさん、たぶん死刑囚ですよ」

 兄ちゃんが顎で、初老の人の方を指して言った。

「えっ! ほんまに?」

 小声で言って、顎の指す方を見た。初老の人は、空の向こうに何があるのか探すかのように、ずっと空の一点を眺めている。

「刑務服着てるでしょ。長いこといて服ないんすよ、たぶん」

「死刑囚おるんや、ここに」

 この時初めて知った。死刑囚は刑が執行されるまでの間、拘置所で死ぬまでの一生を過ごすことになる。

「うちの主犯も、ここの3階にいるんすよ」

「なんで知ってんの?」

「手紙でやりとりしてますから」

「そうなんや。おとなしくしてるの?」

「おとなしいどころか、手紙の文面が神様仏様みたいな感じなんですよ」

 人間2人を殺して、おそらく自分は死刑になる。懺悔の日々を繰り返し、自分の死を受け入れ、苦しい日々を通り過ぎ、覚悟へと変わり、達観してしまうのだろうか。

「で、兄さんは何したんですか?」

 軽く足踏みをしながら尋ねてきた。

 俺は、自分のあまりにもショボい罪に恥ずかしさを感じていたが、ここまで話してくれたのに言わない訳にはいかない。

「シャブをね、ちょっといじってね、捌いてアウトです」

 この屋上から見えるグラウンドを見下ろすと、横浜刑務所の受刑者たちが、大きな掛け声を出して行進していた。

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