1ページ目から読む
5/5ページ目

五体満足な身体でなくとも人を殺すことができる

 このときに発生する犠牲は、韓国での革命を先導する前衛部隊としては、革命事業のための準備過程であるので嫌とは言えず、避けることは不可能であると教えられる。

 正常な民主主義国家ならば大問題となるところだが、北朝鮮では、南北対立の状況下において韓国での革命および究極的に統一を成し遂げるためには、この程度の犠牲やそれに伴う混乱などは問題でなく、やり遂げるしかないというのが特殊部隊の常識となっている。

 辛い訓練課程を成功裏に修了するのは容易なことではない。しかしながら、この課程を経た暁には、特殊部隊員たちはほとんど万能の戦士になっている。世界ではほとんどの国が特殊な任務を遂行するための特別な戦士を養成し、保有している。米国のネイビー・シールズ(Navy SEALs)や英国の特殊空挺部隊(SAS)などが世界的な知名度を誇っているが、北朝鮮の特殊部隊員に対する認知度はまだ低い。しかし、北朝鮮特殊部隊の実情が広く知られれば、世界のどの国と比較しても遜色はないとわかるはずである。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

 彼らは陸上でも海上でも、あるいは公衆の中であっても作戦を遂行する能力を持った軍人たちである。特殊部隊の工作要員たちは1人で100トン級の船を操縦することができ、20キロ余の距離の水泳ができ、強い流れに乗って戦術行動をとりながら泳ぐことさえできる。カン・ミンチョルと同じ部隊出身のある特殊部隊員は、自分は(平壌の)万景台(マンギョンデ)から西海閘門(ソヘカプムン)まで約100キロの水路を泳いだことがあると言っていた。潜水訓練では15メートルは基本だった。多くはもっと深い所まで潜水する。また、陸地でも川でも海でも、彼らは何の痕跡も残さず移動ができるよう訓練を受けている。

 北朝鮮特殊部隊による青瓦台襲撃未遂事件の際に韓国に潜入した特殊部隊員たちも、雪が積もった山を行軍しながら足跡を消していた。川の流れに乗って泳いだり、特殊設計の潜水艇に乗ったり、または船体にぶら下がって韓国に潜入したりするのは、彼らにとっては特別な仕事ではない。このような場合、通常では母船は韓国の領域外で待機している。現在、韓国に居住する元北朝鮮特殊工作員たちは、日本は一時ほとんど無防備状態で、いつでも行きたいときに行き、やりたい活動ができたと証言している。彼らは主に山口、沖縄、福岡などの海岸地域を随時自由に、また頻繁に出入りしたと語った。

 カン・ミンチョルはビルマの刑務所にいたとき、同僚の服役者たちに、自分は暗殺の専門家として特殊訓練を受けた武術の高段者だから、五体満足な身体でなくとも人を殺すことができると語っていたという。暗殺用に製作された特殊小型銃器についても話しており、この銃は手の中に隠すことができるほどのサイズで、誰であれ、どこを撃たれても3秒以内に死ぬと言っていたらしい。