昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/06/15

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 政治, 読書, 社会

小池マジックに惑わされるな

 ここまで書いてきて、なぜか一抹の虚しさを感じてしまうのはなぜだろう。未だに小池知事を女性政治家のフロントランナーだと勘違いしている都民・国民が多数存在しているからである。

 実は少し前まで、筆者の妻も、そんな小池マジックに引っかかった典型的な都民の一人だった。5年前の秋、突然の人事異動によって環境局次長から中央卸売市場次長に任じられ、その直後から市場移転問題にドップリ浸かる毎日を送るハメになった筆者は、小池知事と嫌というほど直接やり取りすることになった。

 数か月も経たないうちに、「あ、この人、信用できない」と直感した。人間、どう取り繕っても地金というヤツは早晩あらわれるものである。小池知事は、その場を取り繕うような笑顔を時折見せる。特に、テレビカメラを前にした時は格別だ。引きつり気味の笑顔と軽妙なコメント、その場を巧みに仕切る腕前は、何も知らない都民を幻惑するに十分である。

 だから、小池知事は本当はとんでもないヤツなんだといくら力説しても、妻から返ってくる言葉はそっけないものだった。「あらそう? 小池さん、意外と頑張ってるじゃない」

いやいや、そうじゃないんだよねー、という具体的な反論証拠については、今回出版した『ハダカの東京都庁』と前述の『築地と豊洲』で嫌というほど書かせていただいた。

築地跡地利用は唐突に

 そして、筆者の粘り強い説得の甲斐あって(?)、妻も今では小池マジックから解き放たれ、小池知事の言動の裏に隠された真意を見抜く眼力を体得するに至った。ついこの間も、小池知事が突如、築地市場跡地を大規模ワクチン接種会場にすると表明した際には、「あれ? 小池さんは国が設置する大規模会場と区別がつきにくくなるから作らないって言ってたじゃない」と小池知事の手のひら返しを的確に指摘していた。

©iStock.com

 事実、築地跡地の利用は唐突に発表され、コロナ対策を所管する福祉保健局の上層部にも知らされていなかった。だから、事務方は大混乱である。築地市場跡地を接種会場とするためには、医療機関として保健所に届け出て登録する必要があるが、こうした手続きはまったくできていない。ただただ、国との対抗意識に駆られた小池知事の露骨なスタンドプレーなのである。

 加えて申し上げれば、そもそも築地跡地は五輪の車両基地として整備が進められている。ワクチン会場としての利用は6月末までだ。本当に付け焼き刃もいいところである。その代わりとして、今度は代々木公園のパブリックビューイング会場を活用すると小池知事は言い出した。会場設営のため公園の木々を伐採することへの批判と反対の声をかわそうとする姿勢が見え見えではないか。

 今、この手の小池知事による生煮え・思いつき指示が雨あられと降りそそぎ、都庁職員は疲弊しきっている。西新宿からは「職員が死にそうだ……」とのうめき声しか聞こえてこない。都庁の「緊急事態」を招いたのが小池知事ご本人であることは、都庁職員なら誰もが認める周知の事実なのである。