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西新宿から「職員が死にそうだ」とうめき声が…… 元幹部職員が明かす、小池百合子が招いた東京都庁の悲惨な「緊急事態」

『ハダカの東京都庁』に寄せて#1

2021/06/15

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 政治, 読書, 社会

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コロナ対策も政治的駆け引きの道具

 小池知事のコロナ対策を高く評価する人は皆無に等しい。

 誰もが経験したことのない非常事態なのだから、試行錯誤も失敗もある程度は致し方ないだろう。だが、3回目の緊急事態宣言の1回目の延長に際して(ああ、ややこしい)、小池知事は劇場やスポーツイベントは緩和しておきながら、人流抑制を名目に映画館や美術館は休業のままという不可解極まりない対応を取った。都民の大半が一貫性のなさに首をかしげると同時に、小池知事の文化・芸術に対する冷たい姿勢に失望したことだろう。

 あまりの批判の多さにやっと気がついたのか、6月からの再延長では映画館などを休業要請の対象から外した。遅きに失したとはこのことで、国との差別化を図るためだけに被害を被った業界はいい迷惑である。

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 ことほどさように小池知事の場合、コロナ対策に自分ファーストを持ち込む度合いが尋常ではない。しかも、そうした自分本位の姿勢を巧妙にカムフラージュして世間を煙に巻こうとする悪い癖が抜けないのだ。

 昨年7月のGoToキャンペーンを巡る、菅官房長官(当時)「圧倒的に東京問題」発言VS小池知事「冷房と暖房と両方かける」発言の応酬に始まり、年末には、国からの時短要請に対して「効果が期待できない」と事態を放置したかと思えば、年明けには菅首相の機先を制する形で1都3県の知事により緊急事態宣言発出を国に迫った。都民の生命や事業者の生活そっちのけの政治的パフォーマンスを繰り返し、一人悦に入っているのが小池知事である。

数字の水増しが常態化!?

 あまり知られていないことだが、軽症患者等のための宿泊療養施設、いわゆるホテルの借り上げに際しては、ホテルの部屋数を実際より大きく見せかけて、実質的に都民をたぶらかしている、それも2度までもである。

 具体的にはこうだ。借り上げた部屋すべてが感染者のために利用されるわけではない。動線を確保するためにデッドスペースが生じる。スタッフ用の部屋や機材等を置く場所も必要だ。結果、実際に使用できるのは借り上げ部屋数のたったの6割にしかならない。つまり、4000室確保したと豪語しても実際は2400室足らず、2400人分しか確保されていないのである。

 ところが、小池知事は昨夏と昨年末、水増しした数字を会見の場で得意げに公表している。6割しか使えないことを知らなかったという言い訳は通用しない。昨夏の時、この矛盾はすでに指摘されていた。ところが、性懲りもなく年末に嘘まがいの数字を、何の注釈なしに発表した。

 4000室と聞けば、誰もが4000室すべてを使える、これで安心だと思うだろう。小池知事はこんな姑息な情報操作を、しれっとした顔で何度もやっているのである。政治家としてと言うより、人間としてこの人を安易に信用するのはやめたほうがいい。

【続きを読む 「なぜ知事である私が……」「落とし前はどうやってつけるの?」」 小池百合子都知事が‟冷たい視線”で激怒した‟パンフレット事件”の内幕】

ハダカの東京都庁

澤 章

文藝春秋

2021年6月10日 発売

西新宿から「職員が死にそうだ」とうめき声が…… 元幹部職員が明かす、小池百合子が招いた東京都庁の悲惨な「緊急事態」

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