コロナ対策やオリンピック開催に揺れる東京都。澤章氏は、東京都庁に30年以上勤め、知事のスピーチライター、人事課長を務めた元幹部だ。澤氏は、築地の現状を提言し、2020年に刊行した『築地と豊洲 「市場移転問題」という名のブラックボックスを開封する』(株式会社都政新報社)がきっかけで、都庁をクビになった。
そして、都庁とマスコミの関係、都庁職員の人間関係や、小池百合子知事の本当の姿について明らかにした書籍が『ハダカの東京都庁』(文藝春秋)だ。実際に見て聞いた、その驚くべき内幕を、同書より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目。前編を読む)
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自民党幹部は200冊買うと豪語した
信用ならないのは、小池知事に限らず政治の世界全般に当てはまることである。『築地と豊洲』は、2020年3月の第1回都議会定例会にぶつける形で出版した。夏に都知事選が実施されるタイミングを見計らい、都議会での論戦に拙著を取り上げてもらって注目を得たいというさもしい下心があった。
2020年の年明け、都議会自民党は小池再選阻止で固まっていた。ところが1月末頃から風向きが変わり、小池批判のトーンが一気にしぼんだ。この時期、水面下で自民党と小池知事は手打ちを行い、夏の都知事選に対立候補を擁立することを見送った。自民党にとって事実上の不戦敗である。
だが、筆者はそんなこととは露知らず、都議会自民党のある幹部に書籍の出版を告げ、全面協力を求めた。この時点でその幹部議員は、「そうか、わかった。よし200冊買うよ」と威勢良く約束してくれた。さすが太っ腹。なにしろ無名の著者による自費出版本である。200冊は喉から手が出るほど欲しい売り上げ部数だった。
ところが、口約束はあっけなく反故にされた。前述したとおり、都議会自民党と小池知事の間で密約が交わされ、200冊お買い上げの皮算用は、哀れ20冊で打ち止めとなった。
都議会での扱いも、本会議場での質疑のネタにはならず、予算特別委員会でさらっと使われたに過ぎない。しかも『築地と豊洲』の一部を引用した自民党議員が答弁を求めた相手は、当の小池知事ではなく、当時中央卸売市場長で既に別の局長に異動した幹部だった。要するに、表向き小池批判はするが、知事自身を追い詰めることは避けて小池知事を守ったということである。
そんな自民党も目前に迫った6月25日告示の都議選では、公明党とヨリを戻して都民ファーストの会から都議会第一党の座を奪還する勢いである。だが、 風を読み政局を操るのが政治家・小池百合子だ。今、表向きは、国と軌を一にしてコロナ抑制・五輪開催に向かっているように見せかけてはいるが、腹の中はわからない。小池劇場の幕が上がるのはこれからと警戒すべきである。