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「来週からソープで働こうと思ってます」

「バンドとか音楽が好きで、地元の高校にいた頃も、お金を貯めていろいろなライブに行ったりしてたんです。それで進路を考えた時に、音楽業界に行きたいと思って、裏方とかイベントスタッフを養成する専門学校に通うことにしたんです。

 家族には反対されましたけど、正直、業界に入れば、目当てのバンドに近づけるかなというのもあって。授業料が150万円くらいするんですけど、それもなんとか借りることができました」

 エンタメ業界の不況は、そのスタッフを養成する専門学校にも暗い影を落としていたのだった。

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「私なりに覚悟決めて入学したんですけど、授業がはじまってみたら全く活気がなくて。クラスメイトも名簿には40人くらいいるんですけど、半分くらいは顔も見せない。先生に話をきいても、いまはコロナのせいでイベント業界は苦境でどんどん潰れてるみたいな暗いことしか言わなくて、要するにこの業界に未来はない、と。私も失敗だったなと思って学校を辞めたというか行ってないんです。

 でも借りた150万は返さないといけない。それでデリヘルの面接を受けたんです。経験もほとんどなかったですけど、お店の人からも指導も何もなく、とりあえずこの部屋に行ってとしかいわれなくて……。

写真はイメージ ©️iStock.com

 始めてみたら、ものすごく忙しくて。昼間のビジネスホテルとかすごい呼ばれますね。お客さんは、だいたいテレワークしてたって言うんですけど。

 音楽関係も含めて、業界関係者を名乗る客も多くて『個別に会ってくれれば仕事を紹介するよ』みたいな誘われ方も多いですね。その中の人に『結局やってることは同じなんだから、ソープのほうがいいんじゃない?』っていわれて、調べてみたら確かに、と思って。こないだ面接に行って、来週からソープで働こうと思ってます」

 いままでも新生活が始まる時期は、新風俗嬢が増える時期でもあった。彼女たちには、それぞれの事情もあるので、一概にその選択を否定するわけにもいかないだろう。しかし、選択の背景にコロナ禍の影響があるのであれば、事態を収束しきれない日本政府に厳しい目が向けられても仕方がないのかもしれない。