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小田急&JR“ナゾの途中駅”「町田」には何がある? “神奈川県町田市”感はいつから?

2021/06/07

genre : ライフ, 歴史, , 社会

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 東京なのに東京ではないような扱いを受ける町がある。……と書くと、それは小笠原諸島ではないのかとか奥多摩だってそうだろうとかいろいろ出てきそうではあるが、もっと身近で人も多いところにその町はある。通っている電車は小田急線とJR横浜線。他に東急田園都市線などもその町をかすめている。そう聞けばわかる人も多かろう。東京都町田市である。

 

 町田に住んでいる皆様にはあらかじめ謝っておくが、多くの東京都民は町田のことを「神奈川」扱いしてはいないだろうか。

 神奈川県町田市などと揶揄されることもあるし、たとえばマクドナルドのクーポンなどには「町田市を除く東京都・千葉県・埼玉県で有効」といったことが書かれていたりする。だいたい地図を見ても、横に長い東京都から町田市だけが神奈川県にちょこんと突き出ている。その位置取りからも、まるで東京ではなく神奈川である。

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今回の路線図。小田急線では一度川崎市内を経てから町田市に入る

 電車に乗ってもそうで、小田急線では一度神奈川県に出て川崎市内を経てから町田市に入る。JR横浜線では川崎市と相模原市に挟まれたところに町田駅がある。それくらい、町田は仲間はずれ感が強い。

 

 などと語ってみたところで、町田市の人口を見ると驚かされる。町田市の人口は約44万人。これは23区を除く東京の市町村では八王子市に次いで多い。つまり東京のみなさんが仲間はずれにしがちな町田市も、実は侮ってはならない存在なのだ。とはいえ、そんな町田市のターミナル・町田駅のことはよく知らない。

「町田」にやってきた

 前置きが長くなってしまったが、そういうわけで町田駅にやってきた。町田駅に乗り入れているのは前述の通り小田急線とJR横浜線だ。どちらが先に開業したかというと、横浜線が1908年で小田急線が1927年。つまり横浜線が先輩であり、町田駅の形を作った立役者というわけだ。ならば先人たちへの敬意を込めて横浜線で向かうとしよう。

 横浜線の町田駅はごく小さな駅である。地上2面4線という構造は他のJR線が乗り入れていない駅にしてはまだ大きい方だが、人口44万人の町のターミナルとしてはいささか小さい。橋上駅舎の北側にはおなじみ駅ビルのルミネがあり、南側には特に駅ビルはない。まずは手軽に南側に出てみよう。

 

 町田駅南口の駅前には、ヨドバシカメラがある。お世辞にも広場とはいえない小さなロータリーの向こうにはファミリーレストラン。その先には境川というこれまた小さな川が流れている。“境”という名の通り、このあたりが東京都と神奈川県の都県境である。

 

 境川に挟まれた一帯、橋から川沿いを眺めてみると大きなマンションなども建っていてベビーカーを押している若い母親の姿などもあるのだが、その川沿いから一歩路地に入るとラブホテルが建ち並ぶちょっといかがわしい雰囲気の町並みである。いくら町田が郊外のターミナルとは言っても、44万都市の駅のすぐ近くにこんな一角があるというのはちょっとおもしろい。